「大変でしたね」「そうなんです」で会話終了…。どうすれば会話は弾むのか? 沈黙が怖かった元日経記者が実践していた「話を聞く3ステップ」

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同調の大切さを先にお話ししたのは、私の失敗をみなさんに繰り返してほしくないからです。

私は、沈黙が怖いタイプでした。そのため、同調→質問→気づきのステップを踏まずに結論めいたことを言ってしまう場合も多かったのです。そうすると、話の流れが悪くなるうえ、相手の本音を聞き出せず、インタビュー記事に仕上げるときには苦労することがありました。

同調は、カウンセリングやコーチングの世界では「ペーシング」といいます。相手にペースを合わせるという意識は、会話が弾む効果が期待できます。相手に心理的安全性を用意するため、姿勢やジェスチャー、表情、声のトーンも相手に合わせます。

例えば、相手が手を組んで話しているときは、同じように手を組んで話を聞きます。会話のスピードも同様です。早口の相手には早めに、ゆっくりと話す相手には遅めにします。

さらに、声のトーンや表情も合わせます。「該当部門から追加要求がありまして……」と話す声のトーンに悩んでいる雰囲気があれば、悩んでいるトーンで話しましょう。相手の表情がにこやかな場合は、にこやかな表情で聞きます。

意図的すぎると不自然になるので注意

身振り手振りや声のトーン、表情を相手に合わせることで、“話しやすい”〝同調してもらえている”といった印象を持たれやすくなります。

ただし、あまりに意図的すぎると、かえって不自然に感じられ、相手に不快感を与えかねません。あくまでも自然な範囲で、さりげなく調整することが大切です。

また、相手が話した言葉を繰り返す、つまりオウム返しするのも同調のテクニックの一つです。「仕事がつらくて」という相手に対して、「仕事がつらいんですね」と同じ言葉を発する。

すると相手は「話を聞いてもらえている」と感じ、より深い話をしてくれるようになります。その結果、お互いの理解が深まり、信頼関係も強くなっていきます。

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単なる共感ではなく、一歩踏み込んで相手の気持ちや状況に寄り添うことが、「聞き出す力」を磨くための大切なステップになります。

そのほかに私が心がけているのは、初めて会う人との取材やインタビューでは、できるだけ相手の名前を呼ぶこと。肩書の「部長」「専務」だけでなく、「〇〇部長は……」「その点について〇〇専務は、どうお考えになりますか」と名前を挟んでいく。ときには肩書を外して「〇〇さんは……」と「さん」付けで呼ぶ。

そうすることで、何度も会っているような雰囲気を醸し出し、親密度を高めるように努めています。

白鳥 和生 流通科学大学商学部教授

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しろとり かずお / Kazuo Shirotori

1967年長野県生まれ。

明治学院大学国際学部を卒業後、1990年に日本経済新聞社に入社。小売り、卸、外食、食品メーカー、流通政策などを長く取材し、「日経MJ」「日本経済新聞」のデスクを歴任。2024 年2月まで編集総合編集センター調査グループ調査担当部長を務めた。

その一方で、国學院大學経済学部と日本大学大学院総合社会情報研究科の非常勤講師として「マーケティング」「流通ビジネス論特講」の科目を担当。

日本大学大学院で企業の社会的責任(CSR)を研究し、2020 年に博士(総合社会文化)の学位を取得する。

2024 年4月より現職。「フードサービス論」なども担当する。著書に『即!ビジネスで使える 新聞記者式伝わる文章術』(CEメディアハウス)、『不況に強いビジネスは北海道の「小売」に学べ』『グミがわかればヒットの法則がわかる』(プレジデント社)などがある。

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