人材輩出の梁山泊だった「日刊まにら新聞」の無念/経営難から詐欺の道具に使われ紙面休刊/天皇も読んだ異色の邦字紙に捧ぐレクイエム

フィリピンの邦字紙「日刊まにら新聞」が2025年9月30日で紙媒体での発行を終了した。ウェブサイトでの発信は続けるという。海外の日本人社会を基盤とする邦字紙が相次いで廃休刊するなか、身売りを繰り返しながらもなんとか命脈を保ってきたが、現在の実質経営者が詐欺容疑で逮捕されたことにより、資金繰りが行き詰まっているもようだ。
独自取材でフィリピン社会や日比関係を報じてきた稀有の日刊紙は同時に、若手の記者を多く育てて日本の大手メディアに送り出してきた。5年前に亡くなった創業者と長く付き合い、浅からぬ因縁のあった筆者としては、忸怩たる思いが募る。
無登録社債460億円販売の業者が買収
2025年8月8日、日刊まにら新聞に以下の社告が載った。
警視庁は同日、フィリピンに拠点を置く金融関連業「S DIVISION HOLDINGS」(SDH社)が無登録で社債を販売していたとして、経営者の須見一容疑者(45)や、まにら新聞前社長の池田葵容疑者(38)ら男女9人を金融商品取引法違反(無登録営業)容疑で逮捕したと発表していた。これを受けて、日本のメディアがSDH社と、まにら新聞の関係を指摘して「歴史ある邦字紙の看板を悪用」などと報じたことに対する弁明だった。
警視庁はさらに8月27日、須見、池田ら3容疑者を詐欺容疑で再逮捕した。直接の容疑は2022年11月から2023年2月にかけて、「フィリピンにおけるコールセンター事業で多額の利益を上げている」などと偽ってSDH社の社債を販売し、岐阜県の男性ら4人から7300万円をだまし取ったことだ。
ほかにも2016年から2024年にかけて「年利24%」などと偽りSDH社の社債購入を違法に持ちかけ、約5500人から約460億円を集めたとみられている。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら