
「世界一高い橋」と聞いてどんな橋をイメージするだろうか。
建設費が「世界一高い」とんでもなく資金をつぎ込んだ橋、橋が架かっている地点の標高が「世界一高い」、ヒマラヤかアンデスにあるような橋、それとも水面からの高さが恐ろしく高い海上の橋……。
実は今夏、「世界一高い」といわれる橋を自分の運転で走る機会を得た。
橋梁の建設技術なら世界でもトップレベルの日本ではなく、そんなイメージのないフランスの丘陵地帯になぜかその橋はあった。
橋の名はミヨー橋(フランス語でViaduc de Millau)といい、ミヨーは橋が架かる地点に一番近い町の名前、「Viaduc」は高架橋などを意味する。
ちなみにフランス語で通常の橋は、「pont(ポン)」であるが(たとえばプロバンス地方にあるローマ時代の有名な水道橋はポン・デュ・ガール)、近現代の技術を駆使した大きな橋などは、こちらのViaducを使うようだ。

ミヨー橋は、高速道路のために架けられた斜張橋(しゃちょうきょう)である。深い渓谷を刻むタルン川を一気に超えるため、2004年に難工事の末開通した。
「世界一」なのは、斜めに張られたワイヤーを支える主塔の高さで、7本ある主塔のうち最も高いものは343m。エッフェル塔(アンテナの先端まで330m)や東京タワー(高さ333m)よりも高いため、これが「世界一」をうたう根拠になっている。
筆者は、開通時にフランスで発行された記念切手をたまたま所有しており、それを眺めながら「いつかこの橋をわたってみたい」と思っていた。それが「高速道路『最高速度150km/hへ』欧州で新たな動き」で記したフランスの旅で実現したのである。
パリとバルセロナ方面を結ぶ高速道路に架かる橋
ミヨー橋は、フランスを走行するオートルート(A75)を通すために架けられた、自動車専用の橋である。
A75はパリからフランス西部、そしてスペイン東部の地中海沿岸に抜ける幹線道路で、橋ができるまでは、300m近い谷にアップダウンの激しいつづら折りの道が通る、交通の難所であった。

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