筆者はこの橋をわたる前に、橋の南側、A75から15分ほどのところにある「ロックフォール=シュル=スールゾン」という村を訪れた。
「世界三大青かびチーズ」ともいわれる「ロックフォール」の産地として知られ、村内には羊乳からつくられるチーズ工房と売店がいくつもあり、団体客でにぎわっていた。
筆者も店頭で「試食」したが、日本で食べるのとは違い、柔らかくて癖がなく、「新鮮なチーズはこんなに食べやすいのか」と驚いた。
この村を含めた一帯の石灰岩地帯は、「コースとセヴェンヌの地中海農牧業の文化的景観」として世界遺産に登録されている。

牧草くらいしか育たない荒れた土地であるが、そんな中でも長く牧畜業を営み続けてきた人々が作り出した景観に価値がある、とされたのである。
また、橋の下を流れるタルン川を下流へと2時間ほどクルマで走ると、世界遺産「アルビ司教都市」がある。
レンガ造りとしては世界最大といわれる「サント・セシル大聖堂」や、この地で生まれ19世紀末に活躍した画家、ロートレック(トゥールーズ=ロートレック=モンファ)の美術館などがあり、中世そのままの街並みが魅力的だ。

アルビは、街並みを守るためにさまざまな工夫をしており、2017年に取材に訪れたことがある。
さらに、ミヨー橋からA75を北へ1時間ほど走ると、「ガラビ橋」(Viaduc de Garabit)という赤い鉄橋が左手にちらっと見える。この橋は1884年、ギュスターヴ・エッフェルによって建設された。そう、エッフェル塔で知られる、あのエッフェルである。
エッフェルは、エッフェル塔やニューヨークの「自由の女神像」の設計で知られるが、本来は橋梁の設計者だ。
「橋」の世界もおもしろい
19世紀を代表する橋のひとつであるガラビ橋と、21世紀の現代技術の結晶ともいえるミヨー橋の両方を見学できるのは、土木や建築好きな人にはたまらない。

なお、A75はフランスの幹線高速道路としてはめずらしく通行料は無料であるが、ミヨー橋をわたる区間だけは有料となっている。通行料は13.7€(およそ2400円)で、橋を建設したエファージュ社という民間企業が直接料金収受を行っている。

架橋技術の発達により、近年さらに規模の大きな道路橋が架けられるようになり、走ってみたい道路が増えた。
たとえば、2018年に開通した、中国・珠海市(広東省)とマカオ、香港を結ぶ、全長28kmもの「港珠澳大橋」などはその代表例だが、この区間は筆者のような日本在住の旅行者がレンタカーを借りて走ることは原則としてできない。
ミヨー橋を自分の運転で走れたことは、貴重な経験だったのだろう。
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