もはや腎臓病は「つらくて苦しい病気」ではない→【名医が教える】ここまで変わった"腎臓復活"の新常識

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このように、腎臓病の常識は大きく変わりました。いまは昔と違って、腎臓を悪くしたとしても、普通の人と同じように活動したり運動したりすることができるようになっているのです。

それに、「腎臓リハビリ」を行えば、腎臓病の進行を抑えたり腎機能を改善させたりすることが可能です。腎臓病はもう「治らない病気」なのではなく、ちゃんとやるべきことさえやれば「自分でコントロールすることができる病気」になっていると言っていいでしょう。

もはや「不幸でかわいそうな病気」ではない

もちろん、医学研究が進んで腎臓病をめぐる状況がよくなってきているとはいえ、決して病気を甘く見ていいわけではありません。腎機能が低下してきたら、予防や治療にしっかり取り組まなくてはならないのは、昔もいまも変わりはありません。

しかし、少なくとも、昔のように腎臓病に対して「不治の病」のような怖れを抱いたり、苦しさや悲愴感を漂わせて病気と向き合ったりする必要はもう「なくなった」と断言していいでしょう。

この文章の冒頭で、以前は腎臓病患者が周りから「偏見まじりの特別な目で見られがちだった」と述べましたが、いまはそんな目で見たりネガティブな発言をしたりしたら「何も分かっていないくせに……」と物笑いの種になるのがオチです。腎臓病患者サイドも、もう普通の人と変わらず仕事をしたり運動をしたりすることができるのですから、胸を張って堂々としていればいい。負い目を感じたり肩身の狭い思いをしたりする必要はまったくありません

実際、私が指導してきた患者さんには、腎臓病になっても仕事、趣味、運動などを積極的に行い、人生をポジティブに楽しんでいる方がたくさんいらっしゃいます。そうした患者さん方の表情からは、苦しさや悲愴感は微塵も感じられません。

私は、昔といまとを比べていちばん大きく変わったのは、「腎臓の病気に対する古臭いイメージ」なのではないかと思います。

腎臓病はもはや「つらくて苦しい病気」でもなければ「一度なったら治らない難しい病気」なのでもありません。「不幸でかわいそうな病気」でもなければ、「気の毒がられる不憫な病気」でもないのです。

ですから、腎臓病がある人もない人も、腎機能低下が気になっている人も気になっていない人も、「こんなに変わっているんだ」という知識は備えておいてほしいと思います。その知識は間違いなく、これからの時代の「新しい常識」となっていくはずです。

上月 正博 東北大学名誉教授、山形県立保健医療大学理事長・学長

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こうづき まさひろ / Masahiro Kouzuki

医学博士。日本腎臓学会功労会員、総合内科専門医、腎臓専門医、高血圧専門医、リハビリテーション科専門医。1981年、東北大学医学部卒業。東北大学大学院内部障害学分野教授、東北大学病院リハビリテーション部長、東北大学大学院障害科学専攻長、同先進統合腎臓科学教授を歴任。2022年より現職。心臓や腎臓などの内部障害のリハビリテーションを専門とする。2011~2021年日本腎臓リハビリテーション学会理事長、2020より国際腎臓リハビリテーション学会理事長。2018年には腎臓リハビリテーションの功績が認められ、心臓や腎臓の分野に貢献した科学者に贈られる世界的に名誉ある賞「ハンス・セリエメダル」、2022年には「日本腎臓財団功労賞」を受賞。

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