「アルツハイマー」の痕跡がありながら、亡くなるまで"ほぼ症状が出なかった"シスターの【脳の密度】

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あなたは、けがで手が使えなくなって足で絵を描く人を見たことがありますか? これを可能にするのも脳の可塑性。脳の一部が損傷しても、それを補うための神経回路がつくられるからです。

脳は一生、新しいことに応じて変化し続ける

驚くべきことに、この脳の可塑性という能力は90歳を過ぎても失われません。若い頃と比べると変化のスピードは遅くなるかもしれませんが、脳は一生を通じて新しいことに応じて変化し続けることができるのです。

こうして脳は老いていく
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また、脳は、90歳になっても新しい神経細胞を生み出す力を持っています。ただし神経細胞は再生力が低いのは事実です。

そのため、大人になると新しい神経細胞はつくられないと考えられてきました。しかし、近年の研究で、特定の場所ではつくられることがわかってきたのです。

現在確認できている場所は2つで、ひとつは、記憶や学習をつかさどる海馬、もうひとつは、前頭葉の下のほうにある、匂いを感じる「嗅球」です。

一般的に加齢とともに少なくなりやすいといわれる海馬の細胞が少しでも増えるなら、それだけで記憶力の低下を抑えられることになります。

90歳でも増えるというのはうれしいニュースです。もちろん、先ほども述べたように細胞を生み出す力も、若い頃と同じようなスピードでというわけにはいきません。しかし、筋肉がそうであるように、90歳になってもあきらめなければ、脳もしっかり応えてくれるのです。

遠藤 英俊 名城大学特任教授

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えんどう ひでとし / Hidetoshi Endo

1982年滋賀医科大学医学部卒。名古屋大学老年科で医学博士を取得。国立長寿医療研究センターにて、長寿医療研修センター長を務める。2020年より聖路加国際大学臨床教授 名城大学特任教授に就任。2021年、老年病や認知症に関する専門的医療を提供する「いのくちファミリークリニック」を開院。日本認知症学会専門医、日本老年医学会老年専門医。脳の老化について長年取り組み、NHK『クローズアップ現代』『きょうの健康』などメディア出演多数。著書に『医師が認知症予防のためにやっていること。』(日経BP)ほか多数

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