「アルツハイマー」の痕跡がありながら、亡くなるまで"ほぼ症状が出なかった"シスターの【脳の密度】
研究対象者は、アメリカのノートルダム教育修道女会にいる678人のシスターたち(70〜100歳代の高齢女性)です。研究方法は、生前の生活、健康状態、認知機能テストの追跡調査と、死後の脳提供による病理解析。
彼女たちは、自分たちの人生を誰かのために役立てたいという思いで研究に参加したといいます。シスター・リタという人は、「私たちは子どもを産まなかったけど、脳を研究に提供することで未来の人たちにプレゼントを贈れる」と言っています。
なぜシスターたちが選ばれたのかというと、彼女たちの暮らしがとてもシンプルで、みな同じような環境で生活をしていたからです。さらにいえば、修道院の規律でタバコやアルコールといった嗜好品の影響を、研究結果から排除することができたからです。
この研究で、とても驚くような発見があります。100歳を超えても記憶力や判断力が保たれていて、日常生活もほぼ自立していたシスターの脳を亡くなった後で解剖してみると、重度のアルツハイマー病レベルの病変があったのです。
脳内に典型的なアルツハイマー病の痕跡が多数見られながら、そのシスターは亡くなるまで読書や書き物を楽しみ、会話もスムーズだったそうです。一方で、アルツハイマー病の症状が現れたシスターの脳を亡くなった後で解剖すると、当然のごとく病変が確認されました。
症状が現れる人と現れない人の違いはどこにあるのでしょうか。それが、これからお話しする、脳の偏りからあなたの脳を守る「予備脳」という概念です。研究が始まったばかりですが、介護や誰かのお世話になることなく、最後まで人生を楽しむための考え方として期待されています。
脳の機能の衰えをバックアップする「予備脳」
予備脳は、予備という言葉から推測できるように、いざというときに備えて前もって準備しておく脳のことです。いざというときとは、脳の老化が始まったときです。脳にこんな機能があるなんて、初めて知ったという方も多いことでしょう。
予備脳とは脳の特定の部位のことではありません。脳全体に張り巡らされた神経ネットワークが、衰えた機能を支える役割を担っているということです。
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