「アルツハイマー」の痕跡がありながら、亡くなるまで"ほぼ症状が出なかった"シスターの【脳の密度】

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何かあってもバックアップが可能ですよね。つまり、神経回路という道ができるだけたくさんあるほうが、バックアップ機能が働きやすくなるというわけです。

脳にある神経細胞は、ピーク時には約860億個もあります。その神経細胞が縦横無尽につくるネットワーク(神経回路)は壮大なスケールです。加齢とともに、その細胞や回路は少なくなりますが、多少減ったところで、もともとのスケールを考えるとカバーできます。

それができることを証明したのが、アルツハイマー病の病変がありながら、症状が現れなかったシスターだと思っています。そのためには、たくさん脳を使って回路を密にすることです。

(出所:『こうして脳は老いていく』より)

※外部配信先ではイラストを全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください

予備脳は90歳でも強化できる

脳をたくさん使ってきた人のほうが強力な予備脳を備えていることになります。つまり、予備脳が強いかどうかは、後天的な要素が大きいということです。

ここで気になるのは、予備脳強化は何歳まで可能なのか? 「私は、若い頃そんなに脳を使っていなかったから『脳の貯金』が少ないかも」「きっと予備脳が働かない、もうダメだ」と思う人もいるかもしれませんが、おそらく何歳になっても予備脳は強化できます。

筋肉は90歳を過ぎても鍛えると強くなるといわれますが、予備脳も同じです。90歳からでも鍛えると強くなります。なぜなら、脳には「可塑性」という特性があるからです。

脳の可塑性とは、新しい経験や学習、環境の変化に適応して、構造や機能を変化させる、脳に備わっている素晴らしい能力のことです。例えば、外国語を学んだり、ピアノを練習したりなど、それまで経験したことがないことに挑戦すると、脳はそれに合わせて新しい神経回路をつくります。

そして、くり返し使うことでその回路はどんどん太く、しっかりしたものになります。この変化は粘土をこねて自由に形を変えるような柔軟さで、脳が自らアップデートしていくのです。

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