「娘の夫の死」きっかけに夫婦ともに"70歳以上"で愛知から東京に移住。不動産屋で経験した"高齢者の家探しの苦労"も語る

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こうした状況の中、敏江さんも娘の近くにいて困ったときは助けたいと考えるようになり、2021年9月に東京移住を決断した。

敏江さんは「夫の75歳の誕生日である2021年12月1日までに決断して欲しいということで、私もここで決断しました」と話す。

家を売ったタイミング

2021年10月、愛知の自宅を売りに出してみたところ、即売れたという。「想定の倍くらいの値段で売れたと思います。自宅があった街は田舎ではありますが、自宅は駅からわりと近い上、名古屋までは30分と交通の便はいい場所です。100坪の土地を更地にして分割し、建て売りにするとのことで、ベッドタウンのようなニーズがあったのでしょう」(義憲さん)。

建物取壊し後の更地
建物取り壊し後の更地(写真:織田さん提供)

自宅が早く売れたのはいいものの、2022年3月1日に受け渡すことが決まったため、一刻も早く東京で家を探す必要が生じた。そこで2021年12月に深夜バスで東京に行き、息子たちとともに新居を探した。

しかし、東京の不動産屋に行っても「65歳以上の方は契約できないんですよ」などと断られ、夫妻は大きなショックを受けた。大きな病気もなく元気なのに、年齢で契約できないとは考えもしなかったからである。

義憲さんは「これはまずいと必死に物件を探し、息子に保証人になってもらった上で、娘が住む練馬区内のマンションを賃貸で契約することができました」と振り返る。

引越準備で父が収集したガラクタ
引越準備で父が収集したガラクタ(骨董品)(写真:織田さん提供)

東京の移住先決定とともに、大きな問題となったのが自宅の荷物や土地だった。自宅には父の形見である骨董品、特に掛け軸や茶碗、花瓶などが大量に置いてあった。これらを一気に処分し、東京移住にあたってモノはかなり減らした。

もう一つの懸念は、義憲さんがもともと寺の長男という点であった。

敏江さんは「愛知にお墓は置いていっていいのか。どうするのかと思った」という。

ただ、義憲さんは寺を継がず、住職だった父も早く亡くなっていたため、日常的に墓の管理をする必要性はなくなっていた。「父は『寺を継がずに自由にしていい。ただし自分のことは自分の責任でやって欲しい』とずっと言っていました」と義憲さんは言う。

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