「大多数がいいっていうものがいいわけない」 "一般ウケは狙わない"? オダギリジョーが異作『オリバーな犬』を現代に生み出した意味
また、深津絵里の存在も大きい。ハンドラーの制服の着こなしがすばらしい。制服のデザインとパターンと縫製もすばらしい。つまり、8年ぶりの映画出演にあたって徹底して仕上げてきている気合いが感じられた。
朝ドラファンとしては、オダギリジョーと深津絵里といえば『カムカムエヴリバディ』(2021年度後期)。2人が夫婦役で共演したことは、朝ドラ史上、実に画期的であった。
それこそ、朝ドラは多数派の極地である。そこに映画やドラマでもなかなかお目にかかれない2人が主要キャストとして毎朝出るなんて奇跡のような時間だった(ただしこの作品は3代ヒロイン体制によってメインで出るのは2カ月間というイレギュラーなものだった。だからこそ実現したともいえるだろう)。

「興収10億」をたぶん目指していない
深津演じる謎めいた新キャラのほか、吉岡里帆、鹿賀丈史、森川葵、高嶋政宏、菊地姫奈、平井まさあき(男性ブランコ)なども劇場版で参加。一方で、ドラマからのおなじみの登場人物も登場し、ドラマのファンなら見て損はない。
新規の観客が飛び込めるかはいささか疑問ではあるが、GUCCIにもイラストを提供している大人気イラストレーター・ヒグチユウコが描くオリバーのイラスト付きのムビチケ(デジタル映画鑑賞券)発売や、犬向け試写会を開催するなどして新たな層にもアプローチしている。
50匹の犬を招待した犬向け試写会とは、呆れてものもいえない(
多数派に背を向けたい、ひねくれ者たちの拠り所になってくれる映画。オダギリジョーを見て、ここまでやっていいんだと勇気を持って立ち上がるクリエイターたちが増えることを願っている。
そして、『オリバーな犬』のような志ある実験作がヒットしてしまうことこそ、常識破りでおもしろい。そんな大逆転を期待している私がいる。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら