「大多数がいいっていうものがいいわけない」 "一般ウケは狙わない"? オダギリジョーが異作『オリバーな犬』を現代に生み出した意味
オダギリジョーはテレビではなく映画が主戦場、それもアメリカアカデミー賞系ではなく、ベネチア、カンヌ映画賞寄りだから、テレビドラマの文脈に沿わないのは当然。風変わりな作風ながら、オダギリとの信頼関係であろう、キャストは豪華だった。
麻生久美子、本田翼、岡山天音、黒木華、佐藤浩市、鈴木慶一、嶋田久作、宇野祥平、香椎由宇、永瀬正敏、松重豊、坂井真紀、火野正平、片桐はいり、玉城ティナ、河合優実、柄本明、松田龍平、染谷将太、仲野太賀、松たか子、橋爪功、村上淳……(順不同)と枚挙にいとまがない演技巧者が集結した。
とりわけ永瀬正敏はテレビドラマではお見かけしない貴重な存在で、出てきた瞬間、拝みたくなるほどだった。

シーズン2の最終回は、劇中劇のようで視聴者の度肝を抜いた。ただ、これが新しいかというと、そうとはいえない。昭和や平成の頃にはこの手の風変わりな作品が存在していたのだ。
オダギリジョーの貴重なテレビドラマ出演作『時効警察』シリーズ(2006年〜2019年)などが好例だ。ほかには堤幸彦の『TRICK』(2000年〜2014年)などもそうだろう。

2010年くらいまでは、かろうじてヘンテコなドラマが存在していたが、2010年以降、下火になっていく。
もともと、人を食ったような作風を不快に思う人も世間にはいて、SNSの流行によって意見が可視化され、独特の表現がやりにくくなってきたところもあるだろう。
すべてをはぐらかすように入念に設計
そんな中で『オリバーな犬』は激しい賛否両論が巻き起こったが、オダギリジョーはそれも織り込み済みだったに違いない。むしろ、多くの人に支持されないように計算したうえだろう。
ひたすら頑張って作ったものがひとりよがりでさっぱりわからないという残念なものでは決してなく、すべてをはぐらかすように入念に設計されている。
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