アンダーアーマー、急成長を支える"情熱" 新興ブランドが巨人を口説き落とせた理由
安田は法政大学在学中にアメリカンフットボール部に所属し、のちに全日本大学選抜チームでも主将を務めた経歴の持ち主。三菱商事を経て、1996年にドーム社を設立。スポーツ用テーピングの輸入販売を開始した。
ドイツにアメフトのコーチとして派遣されたとき、アンダーアーマーに出会った。「それまでウエアはコットンが常識だった。軽くて速乾のウエアに衝撃を受けた」(安田)。現地から連絡を取り、アンダーアーマーの創業者、ケビン・プランクと出会う。1998年から契約を結び、日本総代理店となった。
成熟したマーケットで、新たな需要を作り出す
安田の理念は「スポーツを通して、お金を稼ぐこと」だ。日本のスポーツ用品市場は、調査会社のユーロモニターによれば、2014年は約1.3兆円だった。
スニーカー人気の復権やランニングブームなどで、この3年ほどは年4%程度ゆるやかに伸びている。ただ、ゴルフや野球など、競技人口が縮小しているスポーツが多いことから、今後大幅な成長は見込めないといわれている。
そのためには、これまでアスリートや愛好家など一部に限られていた購入者層を「日本全体にスポーツカルチャーを根付かせ、市場を創出していく必要がある」と安田は考える。
アンダーアーマーの総代理店であるドーム社は、ブランドイメージや顧客とのつながりを重視してきた。名だたるトップアスリートとの契約がブランド力向上につながっているのは言うまでもない。
安田が最もこだわっているのは、「アンダーアーマーの商品はかっこいい。自分も着てみたい」という想いを顧客に持ってもらうこと。
そのためにドームでは、店舗の内装は安田自らが現地に赴き、内容を決定している。宣伝に使う映像、音響なども徹底的にこだわっている。商品の魅力を一番わかっている自分たちが、どうすればアンダーアーマーのイメージを正確に伝えられるか、腐心する。
さらに、担当者が野球やアメフトなどのチームに出向き、他社製品との違いを説明したり、選手の要望を直接吸い上げるなどきめ細かい営業も行っている。
イメージ戦略の最たるものが、冒頭のジャイアンツとの契約だ。きっかけは2013年12月にさかのぼる。安田は従来から、米大リーグのヤンキースと比べても、遜色ないジャイアンツの観客動員数に、ビジネスとしての魅力を感じていた。ただ、米ヤンキースに比べると、ジャイアンツはグッズ収入など、周辺事業の収益性に差がついている。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら