医師が警鐘「根拠なき『がんの自由診療』に飛びつかないで」 患者の思いを利用する「ビジネス」の問題点

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この遺伝子治療以外にも、がんに対する「自由診療」や「代替療法」を提供している医療機関は数え切れないほどある。公的な保険は適用されないため、高額になるケースが多い。

勝俣さんは、「はっきり言えば、がんの自由診療、と書いてあったら怪しいと思った方がいいです」と言い切る。

効果が期待できる治療法や薬なら「世界的な大発見」の可能性があるため、症例を報告して研究の対象となる。

「わらにもすがりたい患者さん側の心理を、医療機関側が利用しているのです。巧みな宣伝文句を使ったりしていて、もはや医療というより、ただの商売ですよね」

勝俣さんが、注意した方がいいと指摘する宣伝文句やキーワードは次のようなものだ。

注意したい宣伝文句

▽「最先端」「先進」など、これが最も新しい治療法だと印象付ける言葉
▽がんが「消えた」「治った」「どんながんにも効果がある」などのうたい文句
▽「免疫アップ」などと免疫に良いかのようにうたう
▽「この治療のおかげでがんが治った」「効果があった」とするいち個人の体験談

細胞実験や動物実験のデータしかない

すでに効果がないと判明した治療を「最先端」とうたっていることもある。

細胞実験や動物実験のデータしかない治療には注意が必要で、よくよく確認した方がいい。

また、自由診療や代替療法が「効いた」とする個人の体験談はもっともあてにならない。

「ちゃんと確認すると、標準治療と並行して受けていたケースが大半なのですが、それを隠している」(勝俣さん)のだという。

ただ、不安に駆られ、大学病院の主治医が提示する「標準治療」よりもっと優れた治療法があるはずだと、情報を探す患者や家族は少なくない。なぜ、標準治療に不安を感じてしまうのか。

勝俣さんはその背景に、「標準治療」という言葉自体への大きな誤解があると指摘する。

それは、標準治療=「ありふれた治療」「普通の治療」と思い込んでしまうということである。

勝俣さんによると、がんの新薬候補の中で、標準治療に採用される確率はわずか0.01%。日本の高校・大学の野球部員がプロになれる確率は0.1~0.2%とされているが、それよりはるかに厳しい。

選び抜かれた存在なのである。

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