「景品は、その重心が落とし口の向こう側に移動したときに落ちます。なので、まずは景品の重心がどこなのかを考えます。重心は1本の指で支えたときに落ちない位置にありますよね?(※正確には、重心があるのは景品の内部)
ゲーム機の脇に景品を置いて触れるゲームセンターもありますから、景品を手に取って考えてみるといいですよ」

重心の位置を予想したら、景品の重さやアームの力も見極めて、アームでどこをつかむかを決める。
「重心をしっかりつかんで落とし口に落とせたらいいのですが、そううまくはいきません。重心を外して物体に力をかけると、物体が回転することを利用しましょう。アームでつかむときにわざと重心を外すことで景品に回転をかけ、落とし口に向かって少しずつ転がしていく作戦です」
小山さんは「クレーンゲームのおもしろさは、1つのゲーム機を巡って店側とプレイヤーがアイデアを出し合うことにある」と語る。
「お店は儲からないと営業を続けられませんから、景品の置き方を変えたり、景品の下にラバーを敷いたりとさまざまな工夫をしてきます。プレイヤーが断然不利なんですが、物理学を使えば少しは抗えます。景品を取れても取れなくても、みんなでワイワイ言いながら『なんでだろう?』と考えてくれたら物理学者としては一番うれしいですね」

物理学に進む女子が少ないのは大人の影響
小山さんは仕事でもクレーンゲームを活用している。学生を寝させないためにはどうすればいいかと考え、2013年に初めて工学部1年生向けにクレーンゲームを使った物理学の授業を実施。現在は全学部の学生を対象とした教養科目やオープンキャンパスの授業でもクレーンゲームを活用している。
「学生の反応は全然違いますね。目をぱちくりさせて熱心に聴いてくれていますし、『物理が嫌いだったけれど面白かった』という感想ももらっています」
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