少年院で「食の大切さ」を講演するカフェ店主「包丁は使い方で料理の味を左右する。雑に扱うと自分や人を傷つける」母からの教え説く

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このほか、医師やカウンセラーを講師に迎えて相談会を開き、心身に悩みを抱えた女性を専門職へつないでいる。インタビューした日の2週間後には「子どもの虐待」をテーマに相談会を予定していた。レジの前には能登半島地震被災地支援のための募金箱が置いてある。広野さんも富山市のボランティア団体の一員として毎月、石川県能登地区へ足を運び、被災者に食べ物や飲み物を提供している。

食を通じて自分を大事にできれば、人も大事にできる

「食の大切さ」を伝えることが、少年たちの更生と、どうつながっていくのだろうか。広野さんに、あらためて聞いてみた。

「2回の講演では『あなたの食べるひと口を大事にしてね。今日食べたものが、明日の自分の体を作るんだよ』と伝えました。食の大切さを考えることは自分の体を大事にすることになります。自分を大事にできれば、人も大事にできると思います。食→自分→他者と大事にすべき対象は関わり合い、子どもの成長は今日から明日、未来へと続いていきます」

広野さんに食の重要性を教えてくれたのは母・正代さんである。86歳にして都内で一人暮らし。今も自分で料理を楽しみ、自慢の一品が完成すると写真を撮ってメッセージを添えて送ってくるそうだ。正代さんは広野さんが物心つくころから一緒に台所に立って野菜の切り方や味付けを教えてくれた。食材の大切さとともに、調理する人に安全を求めた。とりわけ刃物の扱いは、「包丁は調理台の真ん中に、刃を人がいる側とは逆に向けて置こう」などと丁寧に教えてくれた。

「包丁は使い方次第で料理の味を左右するよ。おいしいものを作るための大事な道具だけど、雑に扱うと自分や人を傷つける。必ず、安全に扱ってね」

少年院の講演で広野さんは、正代さんの言葉を、そのまま伝えている。母の教えを思い起こし、目の前の少年たちに長く離れて暮らしたわが子の面影を重ねた。「食の大切さ」を説く講演は今後も続く予定で、次回は2026年2月を予定する。広野さんは「どこへでも出向き、食の大切さを伝えたい」と話している。

広野さん
「野菜ランチ」を提供する広野さん(筆者撮影)
【画像を見る】本編では紹介しきれなかった画像も。広野さんが営む「カフェゴッコ」の料理や講座の様子はこんな感じ
若林 朋子 フリーランス記者
わかばやし ともこ / Tomoko Wakabayashi

1971年富山市生まれ、同市在住。元北國・富山新聞記者。新聞記者時代は20代にスポーツ全般、30代に教育・研究・医療などを担当した後、退社しフリーランスとなる。Webメディア・雑誌・書籍・広報誌などで執筆。聞き書きなどで携わった書籍は『世界も驚くおいしいパン屋の仕事論』(PHP研究所)など。北陸を拠点に活動し、魅力的な人・場所・出来事との出会いを発信していきたい。

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