荒波の中稼ぐ液晶部材、強さの源は「寡占力」 部材メーカーの好況は今後も続くのか
なぜ液晶部材で寡占状態が築けているのか。ここには各社が液晶以外の“本業”を持つという特性がある。
たとえば大日本印刷は、社名のとおり、印刷事業が祖業だ。インクを精密に印刷する技術を生かして液晶分野に進出した。日本写真印刷も、印刷技術をタッチパネル分野に生かし、従来ガラスが使われていたタッチパネルをフィルムで置き換えてきた。
小型ベアリングが主力事業のミネベアは、一見、バックライトと関連性がないように思われる。だが、ベアリング製造で培った超精密加工技術を応用、他社にまねできない薄さの製品を量産した。各社とも、数十年間培ってきた技術を横展開することで、他メーカーが追随不可能な技術優位性を生み出すことに成功しているのだ。
既存事業のノウハウをつぎ込む
さらに、製品の多くが新興メーカーによる模倣が難しい分野であることも、寡占状態の維持につながっている。
部材メーカー幹部は「川下分野は製造装置を買い、技術者を何人か引き抜けば、新興メーカーでもそれなりの水準になる。一方、われわれが扱う部材は、化学製品のように合成から製造まで特許とブラックボックスの塊。多少人材を引き抜いた程度ではまねできない」と解説する。
部材の多くが装置産業である点も大きい。ガラスやフィルムの製造には巨大な装置が必要である。富士フイルムの場合、液晶用のTACフィルムは、製造ラインを作るのに、1基100億円以上の製造装置が必要になる。
同社は現在の生産能力を確保するために、2000年以降、累計で3500億円超を投資してきた。一度市場が成熟すると、後発企業が大型の設備投資をして新規参入する余地は、小さくなる。
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