人気フォント『貂明朝』や『百千鳥』はこうして生まれた! スマホやPCの文字をイチから手作り、敏腕タイプフェイスデザイナーが紡ぐ"ロマン"

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西塚さん
お話を伺ったアドビ株式会社のタイプフェイスデザイナー、西塚涼子さん(撮影:梅谷秀司)

文字の役割を「ファッションであり、聞こえていない声でもある」と表現する一人の女性がいます。

スマートフォンでニュースを読んだり、パソコンで資料を作ったり。私たちの毎日は、たくさんの「文字」で溢れています。普段、何気なく目にしているその文字たちが、実は一つひとつ丁寧にデザインされ、それぞれが異なる「声」を持っていると考えたことはあるでしょうか。

言葉に豊かな表情を与え、私たちの感情に静かに働きかける。それが、タイプフェイスデザイナーの仕事。デジタル社会の土台を支えながらも、その実態はあまり知られていません。

世界的なソフトウェア企業であるアドビの日本法人で、唯一のプリンシパルデザイナーとしてフォント(書体)開発の第一線を走り続ける西塚涼子さん(53)を訪ね、その奥深く、創造性に満ちた世界をひも解きます。

私たちが使うあらゆる“文字”を手作りする仕事

タイプフェイスデザイナーとは、具体的にどんなお仕事なのでしょうか。そう問いかけると、西塚さんは「ほぼ全人類に関わる仕事」と話します。

「日頃、みなさんは意識していなくても文字を読んでいると思うんです。例えば、メールやSNSの通知メッセージ。アプリのアイコン名ですら、それは人が作っているもの。ひらがなの『あ』や漢字の『一』『二』『三』、そして『鬱』のような画数の多い文字も、すべて手作りするのが私の役目です」(西塚さん、以下同)

スマホやPCで、私たちは当たり前のようにフォントを選びますが、明朝体やゴシック体といった選択肢一つひとつが、実は西塚さんのようなデザイナーによって時間をかけて作られた、文字データの集合体。もしフォントがなければ、私たちは画面に文字を表示することも、紙に印刷することもできません。

かつて人々はハンコのように、活字を1つずつ手で彫っていましたが、デジタルに移行した現代でも、文字をデザインし作り上げていくという、職人的な営みは同じなのです。

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