『地球の歩き方 ハプスブルク帝国』が異例の発売前重版…「存在しない国」まで扱うようになった"旅行者のバイブル"はどこへ行く?
由良さんは続ける。
「実はいまも、海外ガイドの売り上げはコロナ禍前の65%程度です。ただ、図鑑シリーズやコラボブックなどをつくってきて感じたのは、ガイドブックの可能性。
さまざまなテーマで世界を横串にしたり、時には時空を越えたり、旅の楽しさを伝え、旅のきっかけを提供する新しい切り口をつくれたと思っています」
読みながら旅を空想する楽しみ
ガイドブックは、読んで楽しい本でもある。ページをめくるたび、空想の旅に出ることができる。作家の岡田悠さんは、これまで100冊以上の『地球の歩き方』を手にしてきた。
「チェックしたところに行くというよりは、旅の気分を高めるために読んでいます。興味がある国の『歩き方』を買って、読みながら旅を空想するのが楽しいですよね。
小説ではない、あくまでガイドなんだけれど、その客観的な情報の中に詩的な表現が混じっていて、旅に出たくなるんです」
旅行の予定はなかったものの『地球の歩き方』を読み、たまらず旅に出たこともある。
「『歩き方』の記述で心に残ったところに行ってみると、ただ観光地をなぞるだけでは出会えないような場所に突然行き当たったりもする。
それがものすごくおもしろい。それに、ボロボロになったガイドブック自体が自分の旅の思い出にもなります」
旅行情報自体はインターネットでいくらでも得られる時代。それでも、旅情をかき立て、思わぬ出会いを生み、旅を終えた後も思い出として本棚に残る。それがガイドブックのよさだという。
創刊46年を迎え、異色のガイドブックを次々に打ち出す『地球の歩き方』の役割も、変わっていない。編集長の由良さんはこう強調する。
「外に出ていろいろなものを自分の目で見ることで、さまざまな価値観を知ることができると思う。『地球の歩き方』はこれからも、旅に出るお手伝い、背中を押す役割を果たし続けます」
(AERA編集部・川口穣)
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