『地球の歩き方 ハプスブルク帝国』が異例の発売前重版…「存在しない国」まで扱うようになった"旅行者のバイブル"はどこへ行く?
『地球の歩き方』は、言わずと知れたバックパッカーのバイブルだ。創刊は成田空港開港の翌年、1979年。
「アメリカ」と「ヨーロッパ」の2編を皮切りに、バックパッカーブームに乗って世界各地の旅行ガイドを刊行してきた。観光地としてメジャーな地域だけでなく、「辺境」と言われる地にも編集スタッフが赴き、生の情報をまとめてきた。
「月刊ムー」とのコラボも
「かつてはいかに安く泊まり、安く旅するかを重視した内容でした。その後、いろいろな世代の方の旅のスタイルに合わせられるよう内容をアップデートしています。
ただ、歴史や文化、雑学を盛り込みながら、安全に旅を楽しんでもらいたいというコアな部分はずっと変わっていません」(由良さん)
その『地球の歩き方』だが、ここ数年は多くの“変わり種”を打ち出して話題を呼んでいる。従来の海外ガイドの刊行を続けながら、国内版を多数発売。
それも県域レベルだけでなく、『横浜市』『杉並区』などの超ローカルなガイドブックまで手掛けている。
そして、特に目を引くのが異色のコラボブック。『月刊ムー』とコラボした『地球の歩き方 ムー ~異世界の歩き方~』は10万部を超えるヒットになった。
人気マンガ『ジョジョの奇妙な冒険』や『宇宙兄弟』とのコラボ、今年8月には、三菱UFJアッセントマネジメントとMSCIが監修した『地球の歩き方 オルカン』まで発売している。
きっかけは新型コロナ禍だった。他の旅行関連産業の例にもれず、コロナ禍は『地球の歩き方』を直撃。売り上げは9割減り、2020年12月にはダイヤモンド・ビッグ社から学研ホールディングス傘下へと事業譲渡されている。
救世主となったのが、もともと東京五輪に合わせて準備していたという『世界244の国と地域』と『東京』だった。『東京』は「遠くにはいけないけれど、近場で楽しみたい」というニーズにマッチして大ヒット。
『244の国と地域』も評判を呼び、「旅の図鑑」としてシリーズ化された。