「高台なのに…」「近くに川はないのに…」全国各地でたびたび起こる"冠水"の知られざる原因 静岡空港の駐車場はなぜ冠水した?

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都市型水害に対して注意しておきたいポイント

① 内水ハザードマップがあればチェック

自治体で、内水氾濫を想定した内水(雨水出水)ハザードマップを作成・公開していれば、まず確認したい。色が塗られていたら要注意だが、色が塗られていない場合にも浸水等が起きないことを担保するものではない。とくに、塀や柵の基礎など小規模な構造物は考慮されていないことがある。

また、洪水ハザードマップしかない自治体では、川の氾濫による洪水で氾濫が想定される地域しか色が塗られていないので注意だ。

② 地名をあてにするな

地名は、ある範囲をもって付けられている。ある地域の中で、高台側の地域もあれば低い側の地域があることがある。「さんずい」系の地名で水害などが起きやすいことはあっても、起きない場所もあれば、全く水に関係ない地名の場所で水害が起こることもある。

西東京市「田無(旧田無市)」なども、由来は諸説あるが高台で「田んぼがない」ことが有力だ。近日の水害が起きた場所でも、自由が丘駅付近は「自由が丘」住所の北側は高台だが、南側は低い低地側だ。

東横線の開通以降、開発に応じて与えられた地名である。開発にともなって改名された地名や地名の合併などは、全国各地でよくある事例だ。そもそも地名の範囲と地形・災害リスクは一致していないことも多い。

ほかにも、西小山駅の小山という住所は高台の台地側だが、浅い谷や谷が多くある地域で、西小山駅は浅い谷底にある。

③ 地名より地形、さらに細かい高低差に注意

地名より注意してほしいのが、地形である。それも、台地や低地(谷)という大雑把な地形ではなく、わずかな数十cm単位の高低差だ。高台の台地の地域であっても、周りより低い場所かどうかをチェックしたい。

調べ方としては、実際に歩いてみるだけでもわずかな高低差に気づくことがある。とくに、雨の日などに雨水が流れてくる側にあるか、側溝など排水施設が機能しているかを実際に観察することが良い。

また、コラム内で各地の解説の図で使った「地理院地図」は無償で公開されているので、「自分で作る色別標高図」を活用してほしい。

トップ>標高・土地の凹凸>自分で作る色別標高図と進んでいただき(青色枠)、表示されたウィンドウ内のパレット状のアイコン(黒色枠)が「自動で着色できる機能」だ。標高の数字は、手動で入力して変更もできる。断面図は、赤色枠の「ツール」の先にある。

標高図
(出所:国土地理院「地理院地図」を基に筆者作成)

最後に

古代中国の孟子に由来する「水は低きに流れる」とは、「物事が自然な成り行きで進むこと」を示すことわざである。小学校4年生の理科「雨水の行方と地面の様子」では、水は、高い場所から低い場所へと流れて集まることを習うが、まさにその通りの現象が起きる。

高台の場所で豪雨があれば、高台という範囲内で、雨水より低い場所に流れるものだ。「高台の地域に住んでいるから」と安心はできない。周りより低い場所で地下階や半地下などがあると、より水が浸入しやすくなってしまうことも懸念だ。

毎日のように報道されるゲリラ雷雨への注意喚起などでも、豪雨じたいの注意喚起はなされても、このような「低い場所があれば、水は集まってくる」ことについては余り重視されていない感を受ける。

都市部においては、雨雲がどこで発生し、どこで雨を降らせるかによって、都市型水害は他人事ではない。ご自宅やご実家、親戚知人のお宅や学校、職場、通学・通勤路、またこれから住み替えようという場所について、都市型水害(内水氾濫)の可能性についても知って頂きたい。

横山 芳春 だいち災害リスク研究所 所長・地盤災害ドクター

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よこやま よしはる / Yoshiharu Yokoyama

地形と地質、地盤災害の専門家。早稲田大学大学院理工学研究科博士課程を修了、関東平野(茨城県南部全域の常陸台地)の地形・地質のなりたちに関する博士論文で博士(理学)の学位を取得。早稲田大学理工学総合研究センター勤務ののち、国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質情報研究部門(旧・通産省工業技術院 地質調査所)などで研究に従事。現在は、さくら事務所が運営するシンクタンクだいち災害リスク研究所所長として、災害が起きた際には速やかに現地入りして被害を調査。地盤災害のプロフェッショナルとして活動している。

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