(第44回)重要なのは利益率、量的拡大ではない

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中国事業は規模が大きいから、利益の額は大きくなる。だから、「利益の多くが中国事業から得られる」ということになる。そして、中国事業が社内的に重視されて経営資源が投入される。

しかし、利益率の低い事業に経営資源を投入することが、企業の長期的な発展にとって望ましいことかどうかは、大いに疑問だ。「バスに乗り遅れるな」と中国事業展開を急ぐ前に、立ち止まっていま一度考え直す必要があるだろう。

自動車における中国ビジネスについて以上論じた諸点は、他の分野の中国市場進出にも当てはまる場合が多い。だから、自動車産業の中国展開は、他の産業の中国展開を考える際に、重要な参考となるだろう。

野口悠紀雄(のぐち・ゆきお)
早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授■1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省(現財務省)入省。72年米イェール大学経済学博士号取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授などを経て、2005年4月より現職。専攻はファイナンス理論、日本経済論。著書は『金融危機の本質は何か』、『「超」整理法』、『1940体制』など多数。(写真:尾形文繁)

(週刊東洋経済2012年4月21日号)
記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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