しかし、中国市場では、自動車の価格低下が著しい。このため、売上高利益率が低下する。現在は高くても、それを将来も続けられるかどうかは、疑問だ。
実際、中国市場での各社の浮き沈みは激しい。早くから乗用車の現地生産を始めていたフォルクスワーゲンの合弁企業である上海大衆と一汽大衆は、90年代には50%を超える市場シェアをもっていた。しかし、00年代初めには赤字に陥った。その後、上海通用がシェアを伸ばし、08年にはトヨタが追い上げた。しかし、早くも09年にはシェアを落とした。このように、中国自動車市場では、激烈な競争が行われている。すでに見てきたエレクトロニクス産業と似た状態だ。
注目すべきは、中国の独立系メーカーである奇瑞汽車と吉利汽車だ。どちらも、政府の補助を受けていない。そして、どちらも、利益が出るかどうかぎりぎりの線で事業を行っていると言われる。こうしたメーカーが存在する市場では、利益率は低いものとならざるをえない。
中国でのビジネスは、量の拡大には寄与するだろう。これまで日本の企業は、利益の最大化を求めるのでなく、生産や販売額の最大化を求める傾向があった。つまり、質の向上より量の拡大を求めてきた。中国ビジネスの展開は、こうした傾向をさらに進める可能性が強い。
国内であれば、生産の量的拡大は、雇用を支えるという効果を持つ。しかし、海外で量的に拡大しても、直接的な効果はない。利益がでなければ無意味だ。場合によっては、かえってマイナスになることもある。