「なぜ責めてしまったのか…」「死んで父に謝りたい」特殊詐欺の被害にあった父が自死…遺族が抱き続ける深い後悔
「娘の嫁ぎ先の両親からなぜ確認しなかったのかと責められ、娘たちが飛んできて『バカ』とか『ボケ』と言われた。確かに私もバカでした。だまされた私が悪い。お金もなくなりました」(女性との電話相談メモ)
2015年にも、60代の女性が電話してきた。振り込め詐欺で500万円の被害に遭った夫を「あなた認知症じゃない!」と家族が責めたところ、海に入って死んでしまったという。

家族を思って金を出してしまった被害者を責めてはいけないと篠原さんは、説く。
「被害者は死んでしまいたいと泣く。ところが本当に死んでしまうと、今度は被害者を責めていた家族が悔やんで、後追い自死も起こる」
「人を殺した金」で食べる焼肉の味はうまいか?
崩壊した家族や自死した人を見続けてきた篠原さんは、特殊詐欺を「間接殺人だ」と表現する。
コロナ禍の前まで、特殊詐欺に加担して刑事施設に収容されている大人や少年たちの前で講演する機会があった。

少年院の少年たちは「結末として亡くなった人がいるんだよ。間接殺人だよ。どう思う」と問いかけられ、静まるそうだ。
「少年院に入った元受け子の少年に聞けば、被害者から受け取った金の1割が手に入るらしい。その金で高級焼肉店に行ってたらふく食べて、その後カラオケ行ってどんちゃん騒ぎをしたと話していた。でも、そんな最高級の肉が本当においしかったかと聞くと、彼らはまた黙っていた」
ときには仕事を紹介するようなこともある。少年院を出たら、正しい手段で得たお金で食事をしてほしいと伝えている。
記憶に強く残っているのは、罪を犯した彼らが「特殊詐欺は仕事だと思っている」と語っていたことだ。