なぜ「GDP過去最高」でも生活は苦しいのか? "見せかけ好景気"を生み出す日本の大問題

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こうした状況のなかで、新しい経済政策や公共事業に求められるのは、限られた人手と資源をどう効率よく使うかという視点だ。

たとえば、1兆円を人々に行き渡らせたいなら、巨大な建造物を作るよりも、直接給付などの、「人手を無駄にしない仕組み」を優先した方がいいだろう。

それでもなお、「経済を回すためにお金を使いたい」と考える人には、寄付という選択肢を勧めたい。自分の大切なお金を、本当に必要とする分野に届けることができれば、それは社会全体の豊かさにもつながるはずだ。

もったいないのは何か?

私たちの日常生活においても、お金を節約するだけでなく、「人手を節約する」という意識が求められている。

宅配便の再配達を減らせば、街を走る配達員の負担が軽くなる。その小さな気遣いが積み重なれば、節約できた労力を他の大切な仕事に振り向けることができる。

お金の不安という幻想 一生働く時代で希望をつかむ8つの視点
『お金の不安という幻想 一生働く時代で希望をつかむ8つの視点』(朝日新聞出版)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

学校現場も同じだ。保護者対応を減らし、先生が教育に専念できるようになれば、子どもたちの未来につながる価値を生む。

「お米一粒でも残したら、もったいない」

この昔ながらの教えには、作り手への敬意と感謝が込められている。それは、モノやヒトが制約だった時代の記憶だ。

私たちがお金に縛られてきたのは、心が貧しくなったからではない。長いあいだ、「お金が制約だった時代」を生きてきたからだ。

その時代は今、終わりを告げようとしている。これから私たちが大切にするべきなのは数字ではなく、その向こう側にいる「ヒトの力」ではないだろうか。

田内 学 お金の向こう研究所代表・社会的金融教育家

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たうち・まなぶ / Manabu Tauchi

お金の向こう研究所代表・社会的金融教育家。2003年ゴールドマン・サックス証券入社。日本国債、円金利デリバティブなどの取引に従事。19年に退職後、執筆活動を始める。

著書に「読者が選ぶビジネス書グランプリ2024」総合グランプリとリベラルアーツ部門賞をダブル受賞した『きみのお金は誰のため』のほか、『お金のむこうに人がいる』、高校の社会科教科書『公共』(共著)などがある。

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