履歴書は手書き必須、最終面接で全落ち…在日11年ベトナム人男性が体験した就活地獄と≪日本の仕事≫のリアル

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「それよりも、もっと明確に、数値で表せるものを扱いたいと思うようになったんです」

こうしてヒウさんは転職し、東京にやってきたばかりだ。電子部品を扱うメーカーで、やはりベトナムはじめ東南アジアに輸出する仕事だが、買いつけた他社の商品ではなく「自社で生産した商品を、誇りをもって販売する」ことが喜びなのだとか。

しかし東京の電車に満ちるストレスフルな空気や、人の多さにはまだまだ慣れないようで「三重のほうが時間の流れがゆっくりで、暮らしやすいですね」と話す。

「艦娘」を育成する日々は終わらない

艦これ
こちらは愛媛県にある旧海軍の戦闘機・紫電改の展示館。ヒウさんは『艦これ』を通じて日本の戦史にも詳しい(写真:ヒウさん提供)

日本での暮らしも、そして『艦これ』の「提督」に就任してからも10年を超えた。この手のゲームといえばお金を出してアイテムなどを買いまくるほど有利というシステムのように思うが、『艦これ』の「課金圧」はそう高くないようだ。

「課金よりも、どれだけ時間をかけたかというゲームですから。私が10年で使ったお金もたいした額ではないですよ。中には完全無課金ですごく強い提督もいるんです」

定期的に行われるゲーム内のイベントでは難易度順に甲・乙・丙・丁とランクづけされているそうなのだが「過去のすべてのイベントを最高難易度の“甲”でクリアした無課金の人がいるんです。すごい!」

そう熱く語って、プレイ画面を見せてくれた。

「これが甲種勲章です」

最高難易度でイベントをクリアした証で、ヒウさんが「相当やばい」と語る無課金の提督はこれを32個、つまり過去の全イベント分、所有している。ヒウさんは17個だ。

ちなみに提督同士のオフラインの交流もたくさん行われているようだが、まだ参加したことはないという。

「そういう機会があれば行きたいんですが……」

同好の日本人の知り合いがおらず、なかなかきっかけがないそうだ。

ヒウさんは『艦これ』を続けつつ、まだ日本で暮らそうと思っている。

「いまの仕事についてもっと学んで、専門家になりたいんです。そしてゆくゆくはベトナムに帰って、日本で学んだことで母国の経済成長に貢献したい。それが理想ですね」

インタビューの最後にヒウさんは、

「なんだか『艦これ』のプロモみたいになっちゃったな。でも最近やる人が減っているから、この記事をきっかけに増えてくれたら」

なんて話して帰っていくのだった。

室橋 裕和 ライター

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むろはし ひろかず / Hirokazu Murohashi

1974年生まれ。週刊誌記者を経てタイに移住。現地発の日本語情報誌に在籍し、10年に渡りタイ及び周辺国を取材する。帰国後はアジア専門のライター、編集者として活動。「アジアに生きる日本人」「日本に生きるアジア人」をテーマとしている。主な著書は『ルポ新大久保』(辰巳出版)、『日本の異国』(晶文社)、『おとなの青春旅行』(講談社現代新書)、『バンコクドリーム Gダイアリー編集部青春記』(イーストプレス)、『海外暮らし最強ナビ・アジア編』(辰巳出版)など。

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