〈改革の一歩〉セブン&アイ、新社長が就任直後にテキサスの現地本部内で自室を構えた理由とは? 過度な"国内重視"の組織風土を変えられるか
しかし流通最大手という巨大組織の変革は、事業基盤の大幅な変化に追いつけなかった。
ホールディングスの要職は現在もセブンーイレブン・ジャパンや、その他の国内事業出身者で埋まったまま。海外企業やグローバル企業での経験がある人材は、デイカス氏を除けばほとんどいない。
ここ数年の経営も、成長領域であるコンビニ事業への「選択と集中」を強く打ち出し、グループ祖業であるイトーヨーカ堂にまで事業整理の手をつけたものの、最大の収益柱であるはずの海外コンビニ事業の管理は“おざなり”だった。
デイカス氏は「これまで本社(親会社としてのセブン&アイ)の社長はほとんどダラス(アメリカ・テキサス州、現地子会社本部)に入っておらず、本社と現地とのコミュニケーションはほとんどなかった」と明かす。先述したテキサス州の現地本部内に自室を構えた理由は、まさにこうした危機感がきっかけとなった。
小粒でも進むガバナンス改革
「ジャパン優遇」の役員体制の見直しや、経営幹部へのグローバル人材の登用についても、デイカス氏は「就任3カ月の段階で、具体的には言えない」としつつ、「マネジメント体制に多様性は必要。現状を変えていかなければならない」と語る。
これらが「売上高10兆円企業の改革策」と聞くと、至極当然なものばかりだ。

井阪前社長など、これまでの経営陣は、自身の生活がかかっている国内の加盟店オーナーというコンビニ業界特有のステークホルダーを前に、「経営リソースの多くを海外に振り向ける」と叫ぶことが難しかったという事情もあるだろう。
対して、デイカス社長は「社長として考えることの半分程度は海外のこと」と強調する。社外から招かれた、しがらみの少ない同氏に期待されるのは、こうした保守的な企業風土を改め、経営陣や会社全体の意識をグローバル企業に変革することだ。
もっとも、大型株として市場に求められているスピード感とは異なるだろう。変革そのものや、業績としての結果に結び付くのが遅れれば、再びアクティビスト(物言う株主)からの追及や外資からの買収といった外圧を招くことになる。
デイカス氏に残された時間はそう多くない。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら