常見:その話はいくつか論点があると思うんです。ひとつは、会社の中でやりたいことをやるという話、やり方が何個かあると思っていて、「ヤミ研」じゃないけど、ずっとそれを持ち続けていて、ずっとずっと実は裏でやっているとか、暗に仕込み始めているとか、企画書を何度もアップデートしているとか、その業界の人脈を作っておくとか。そしておっしゃるとおり、会社の向かう方向と擦り寄るというか、アジャストする。それとやりたい「こと」をやるんじゃなくてやりたい「よう」にやるということがあると思うんです。
石川:そうですね。そのときに会社が動いていくときの波をいろんなかたちでとらえていくんだと思うんですよ。波の種類がありますよね。手法軸でくることもあれば、マーケット軸、対称軸など、いろんな文脈が社内で流れているときに、自分のやりたいことが「今この波に乗っかっておくと、すーっと前までいけそうだな」というのをつかまえられるかということだと思うんです。
常見:そう。そこ、若い人に引き寄せて言うと、「就職活動のときにどうせ全部教えてくれないのに業界・企業研究を一生懸命したのに、業界とか企業の中に入ったら、なんで業界・企業研究をそこそこに、わかった気になってしまうのか」と。中に入るといろんなメッセージがあるんですよ。
石川:あー。
人事や経営陣のスピーチには何らかの意図が隠れている
常見:社長が変わるとか、役員に誰かが抜擢されるとか、35歳が事業部長になったとか、人事は全部、経営からのメッセージなんです。「この人を上げたってことは、この会社ってますます仕組みの方向に行くのね」とか「営業魂を忘れてないのね」とかっていうことがあると思うし。
石川:MBAのコースをやっていると、最後に修論を書いてもらっていて、2月に審査とかがあるんですよね。お正月とか結構忙しいんですけど、よく僕が学生の方に話をするのが、だいたいお正月明けに年頭に社長が挨拶をしますよね。「どんな挨拶でしたか?」って聞くと「は?」って顔をされるんですけど、それは絶対聞かないといけないと思うんですよ。
僕の講義は「会社に起案する新規事業の案を考えましょう」というテーマなので、今、社長がどういう文脈の中にいて、どんな言葉を使っているかも知らずにプレゼンするのは、僕にとってはありえないんですよね。「社長がお正月にも言っていたように」とプレゼンをするのかどうかで受けは全然違うわけで。それはマーケティングですよね。会社の中でやっていくのであれば。
常見:そう、秘書がスピーチ文を書くことも結構あるんだけど、それにしてもなんらかの意図があるんですよね。「社長また馬鹿なこと言ってるな」「明らかに考えてないな」ということもひとつの方針だったりするわけですよ。社長が何を言っても深いなと思っていて、特にまだ実績が現れていないことをやる上では読み解くべきだなというのはひとつありますよね。
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