「いま最もApple的」な新興デジタル製品メーカー《Nothing》の正体。透明パネルが特徴、ファンと独特な関係。注目のイギリス発ベンチャーを解説

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英スピーカーメーカーとして老舗のKEFと共同開発した音響設計、8.9mm厚の高剛性ニッケル被膜振動板を採用する。やや保守的な音質ではあるが、音量調整用の「ローラー」ボタン、曲送り用の「パドル」など、物理的な操作は触覚だけで識別できるように配慮するなど、間違えやすいタッチ操作の煩わしさを解消し、音楽鑑賞への没入感を高める狙いがある。

なぜ“かつてのApple”を想起させるのか?

Nothingはガジェット好き、あるいはテクノロジー製品を扱うプレス関係者の間で「いまもっともApple的」だと評されることもある。筆者も最初に感じたのは、まさに“かつてのAppleのよう”という感覚だ。

もっとも、見た目のデザインに関して似ていると指摘しているわけではない。その思想やアプローチがかつてのAppleを彷彿とさせ、かつてのAppleが思考していた方向性を「再翻訳」しているかのように感じる。

現在でこそAppleは世界有数の巨大企業となり最新テクノロジーの権化のように見られがちだが、スティーブ・ジョブズ氏の復帰前後には身売りが避けられないと言われた時期もあった。当時、落ち込んでいたAppleが復活していく過程で、彼らは「最新テクノロジーそのものを追いかける」のではなく「最新テクノロジーで何をするか」にフォーカスしていた。

例えば初代iPhoneでは、Apple自身がマルチタッチ対応のタッチパネル技術を発明したわけではない。実用間近だったマルチタッチ技術にいち早く注目し、その実用化において洗練されたUI(ピンチやスワイプ操作など)の開発を行い、ハードウェアとOSに統合して誰もが直感的に使える製品として世に送り出した。

Appleは先端テクノロジーに投資を行うのではなく、実現間近の技術に投資し、先端技術の「実用化・商品化」で大きな成果を挙げた。テクノロジーを分かりやすく使いやすい形で生活者に提供する、つまり先端技術を一般ユーザー向けに“翻訳”する力でトップ企業へと復権した。

これはまさにNothingが目指す方向性と共通している。Nothingの作るスマートフォンが備えるGlyphインターフェイスは、画面表示に縛られないよう伏せて机の上に置きつつも、ほんのりと状況をユーザーに知らせる仕掛けだ。

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