『仁義なき日本沈没』を書いた春日太一氏に聞く

身につまされる映画史を描きたい

 

--新書での発行が続いていますね。

今回の本(仁義なき日本沈没)も単行本から始まった企画なんですが、新書に向いているんじゃないかとなった。とくに、ネタがマニアックなので、単行本で映画コーナーに置かれたら誰も手にとってもらえない気がしたんですよ。

『時代劇は死なず』の企画書にも書いたのですが「これは時代劇版のプロジェクトXである」と。つまり、ダムに興味がない人でもダムを作った人の話は泣けると。そのために、プロジェクトXはあんなに視聴率が取れた。決してダム好きが見てたわけではない。油田を掘る人やダムをつくる人の話にも普遍的なものがある。それは時代劇にもいえる。

 時代劇をつくってきた人間もわれわれ働いている人間と同じだ。だから、町で働いている人が読んで感動できるものになりうるんだと売り方を説明し、「それなら新書にぴったりだ」ということで、無名の研究者の書いた本ですが出すことができました。

映画のマニアックなことをやっているんですが、映画の内情にさほど興味のない人にも、こんなに熱いドラマがあるんだとわかってもらい、映画がいっそう好きになってもらえれば。いつもそういう想いを込めて書いています。

--この『仁義なき日本沈没』と『時代劇は死なず』は表裏一体ですね。

『時代劇は死なず』は映画からテレビへ行った人たちの話です。では、残った映画の方はどうだったのか、というのが『仁義なき日本沈没』。この2つをあわせると、当時の映画界というのが立体的にわかるように意図しています。すべて、60年代の斜陽期と呼ばれる時期を、どうやって生き抜いていったのか。それが大きなテーマになっている。これまで出した3冊も、いま書いている2冊の本も60年代から70年代にかけてが大きなテーマになっています。

--新作を2冊予定している?

ひとつはPHPの『Voice』に連載した仲代達矢さんのインタビューで、それを書籍にします。6回限定の連載だったので、20万字分もしゃべってもらったのに、トータル5万字しか書けなかった。そういう意味では、今回、超大幅加筆修正が行われています。連載では、山本薩夫や高峰秀子、成瀬巳喜男の話をまるまるカットしていましたが、その辺が本では全部載りますから、かなり面白いですよ。秋口には何とか出せればと。

もう1冊は、まだ話せないのですが、これも日本映画に関する話ですね。

かすが・たいち
 1977年東京都生まれ。日本大学大学院博士後期課程修了(芸術学博士)。時代劇を中心に、映画やドラマを研究。著書は他に『時代劇は死なず』(集英社新書)、『天才 勝新太郎』(文春新書)など。

(聞き手:山内哲夫 =東洋経済オンライン)

『仁義なき日本沈没 東宝v.s東映の戦後サバイバル』 新潮新書 740円 256ページ

 

 

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