ユニクロもコラボした「ラブブ」、世界的ブームで最高益、快進撃の舞台裏。ポップマートCEOが明かした“キティ、ナルト”への野望

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ポップマートの事業について先入観がない海外市場で、ラブブの人気が高まったところに新カテゴリーを出したことは、巨大な中国市場に頼らず利益を創出し、かつ従来のフィギュアの製造販売から自社IPを軸に新たな収益源を開拓するビジネスモデルに舵を切れたという点で、大きな意味を持った。

ポップマートによるとフィギュアよりぬいぐるみのほうが収益性が高く、自社IPの展開先を増やせたことが、利益率の向上に寄与した。

キティ、ナルトと比較

王寧CEOは通期の見通しについて、「当社は昨年100億元の売上高を達成し、今年は200億元を目指しているが、300億元も容易に達成できると感じている」と自信を示した。

ただし、足元では生産能力の確保に苦しんでいる。同CEOは工場が「ミシンが煙を出すほど」フル稼働し、1年間で生産能力を10倍に増強したと強調したが、それでも市場の需要に対応できず、転売価格が高騰し「金融先物」と揶揄される事態を招いた。

本物が入手困難なことから、偽物が大量に出回ることにもなり、ブランド価値の毀損の危機にも直面した。

また、投資家はラブブ人気の持続性にも懸念を示している。日本では認知が高まっている段階だが、中国では投機の対象になったがゆえにIPが消費され、ラブブの人気は6月にピークアウトした。ユニクロとのコラボTシャツは日本より3日早い22日に発売されたが、混乱もなく店頭で普通に買える状態だ。

王寧CEOはラブブの“寿命”について「今年は皆がラブブについて話していますが、ミッキーマウスやナルト、ハローキティの人気については話題にしない。しかしこれらのIPは世界的に大きな商業価値を発揮し続けている」とし、「金鉱が発見されると大ニュースになる。その後、ニュース性が下がって人々が気に留めなくなっても、金鉱が消えるわけではなくそこから採掘が始まるのだ」と述べた。

王寧CEOの今の目標は、ラブブを100年続くIPにすることだという。そのステップとして、決算発表会では間もなく発売する「ミニラブブ」を披露した。

ポップマートは中国のZ世代女性に集めてもらうことで、ミニフィギュアをヒットさせた。海外ではぬいぐるみを投入し、バッグにつけてもらうことで、SNSやリアルの場を通じて人の目に触れる機会を増やし、ファン層を広げた。

次のステップは「スマホのストラップにできるような日常使いできる商品を発売し、消費者との接点を増やす」(王寧CEO)ことだという。

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ポップマート成田空港第2ターミナル店
6月末には成田空港第2ターミナル店がオープンした(写真:編集部撮影)
浦上 早苗 経済ジャーナリスト、法政大学MBA兼任教員(コミュニケーションマネジメント)

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うらがみ さなえ / Sanae Uragami

福岡市出身、早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で教員。現在は経済分野を中心に執筆編集、海外企業の日本進出における情報発信の助言を手掛ける。近著に『崖っぷち母子 仕事と子育てに詰んで中国へ飛ぶ』(大和書房)『新型コロナVS中国14億人』(小学館新書)。
X: https://twitter.com/sanadi37
公式サイト: https://uragami-sanae.jimdosite.com/

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