引き出しから食器を選び、できたての料理を盛り付ける。その動線の快適さは、リフォームしてみなければわからなかった。
リフォームの翌年、髙森さんに思いもよらぬ展開が待っていた。夫に肝臓がんが発覚したのだ。
無事に手術を終えて退院した夫が療養生活に入った頃は、コロナ禍の外出自粛期間と重なっており、髙森さんもギャラリーを長期休業した。夫とふたり、自宅で1日を過ごす日々。そして83歳にして人生ではじめて、髙森さんは毎日3度の食事を作ることになったという。
夫の回復とコロナの終息を待つ日々が、新しい台所の改善点を存分に堪能できる日々となったのである。「我が家にとってはちょうど具合がいい時期だった」と、髙森さんは笑う。


60代や70代のときにリフォームしなくてよかった

その後、髙森さんはリフォーム内容やその後の暮らし方を『85歳現役、暮らしの中心は台所』(小学館)という1冊にまとめて、出版した。それからさらに3年が過ぎた現在も、髙森さんの暮らしの中心は変わらず台所である。
「今思うのは、60代や70代のときにリフォームしなくてよかったということ。だって80代とは体が全然違うから。そのときに使い勝手のいいようにリフォームしていたら、88歳の今、快適に楽しく台所に立てていたかどうかわかりません」
年をとるほど自分の優先順位は、世間の基準ともほかの人とも違ってくる。変わらないのは、今日も明日も「今が一番若い」ということ。
「さらなる老後を頭のどこかで案じつつも、一番若い今を居心地よく暮らしていきたいと思います」
【続きを読む】「洋服は必ずリフォーム」「夫婦で自室を持つ」素敵な暮らしの88歳がたどり着いた、《最高に快適な老後》の生き方
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