ですので、まず自分の中に入ってきた情報を整理しながら読み、自分の言葉に変換をしてメモに残せば「出力」ができます。特におすすめなのは、一緒にいる人に本の内容を話してみることです。
読んでいるときはわかったつもりでも、説明しようとすると理解や記憶が曖昧で意外と言葉が出てこないことに気が付きます。「出力」の練習を繰り返すことで、神経回路が強化され、読んだ本の知識が記憶に定着していきます。
『シン読解力』の中で新井先生は、音読や視写のトレーニングを取り入れることが、課題外在性認知負荷(=学習内容に取り組む以外で生じる認知負荷)を下げ、ワーキングメモリの容量を有効活用するために効果的だと書かれていました。
ワーキングメモリがいっぱいになってしまうと、脳の中で情報がスタックしてしまうので、この「作業外の刺激をなるべく減らす」という指摘はまさにその通りだと思いました。
中でも音読は、脳科学的にも前頭前野を広く活性化する効果的な「脳トレ」であることがわかっています。
音読をしているときには、広範囲の脳領域が活性化します。脳には、使うほど育ち、使わなければ衰えていってしまうという単純な性質があります。
脳の働きを維持するという意味で、音読は大人にとっても認知症予防などの観点で推奨されている方法です。
ワーキングメモリは、スポーツで言えばランニングや筋トレで鍛えるような基礎体力に当たる部分です。脳の基礎となる力を維持するためにも、音読はおすすめの方法です。
読み聞かせが子どもと大人に与える効果
また、『シン読解力』では幼児期の絵本の読み聞かせが、語彙量のアップに効果的な方法だと紹介されていました。実は、脳活動の観点からも、読み聞かせは推奨されています。
読み聞かせの活動を行うとき、読み聞かせをする大人の側では、単純な音読に比べて、脳の司令塔、前頭前野に大きな活動が生じることがわかっています。
また、読み聞かせをされる子どもの側では、言語発達にかかわる側頭葉や感情にかかわる脳領域などに活動が見られました。
それだけではなく読み聞かせは、大人と子どもの心の安定にも効果的です。
山形県長井市と私たち東北大学の共同研究から、8週間にわたって読み聞かせをしてもらうと、子どもの不安や抑うつなどの感情的な問題が減り、さらに問題行動が減るという結果が出ました。さらに、読み聞かせ時間に比例して、保護者の育児ストレスも軽減されるという研究結果が出ています。
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