「お母さんが帰ってこない…」「ゴミ山で眠る子どもたち」シングルマザー家庭の《ゴミ屋敷》を片付ける業者が見た、“切なすぎる事情”

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「生活保護を受けていると、引っ越し費用は行政から出るんです。でも、ゴミ屋敷の片付けは出る自治体と出ない自治体があって、生活福祉課のさじ加減で決まってきます。また、費用が出ると言っても限度額があるので、差額分は支給額から捻出しなければならないこともあります」

生活保護を受けているとある家庭が、イーブイの動画を観て「この業者にお願いしたい」とケースワーカーに相談したとする。とはいえ、税金でまかなう以上、費用は可能な限り抑えなければならない。

「何社かに見積もりをしてもらったうえで、もっとも安い業者にお願いすることになります。そうなると悪徳な業者が交じってくることもあるので、『どうしてもイーブイに』とおっしゃってくださる方のために、なんとか利益を削って担当することもあります」

そうまでしたにもかかわらず、料金未払いのまま連絡がつかなくなる家庭もある。

ゴミ屋敷
最初に紹介した、子2人と住むシングルマザーの家は、イーブイによってきれいに生まれ変わった(画像:「イーブイ片付けチャンネル」より)

ゴミ屋敷の現場を動画配信する理由

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ビジネスの観点からすれば、分割払いにする場合は利子をつけるか、そもそも支払う能力のない顧客の依頼は受けないことだろう。

それでも、リスクのある依頼を受け続ける理由とは何なのだろうか。

「私も従業員たちの生活を背負っているので、もちろん相手を見て分割の支払いを断ることもあります。でも、“助けて”って言われたら簡単に断ることなんてできないじゃないですか。世間が気付いていないだけで、ゴミ屋敷で悩んでいる人ってめちゃくちゃ多いんですよ。そういう人たちが一歩踏み出して私たちのような業者に相談するきっかけをつくるために、動画を配信しているんです」

そうしてイーブイにたどり着いたゴミ屋敷の住人の想いを、無下にすることなどできない。

ゴミ屋敷
ゴキブリまみれの中で暮らす3人の子の家も、すべて一掃された(画像:「イーブイ片付けチャンネル」より)
ゴミ屋敷
床や壁の痛みは激しいが、きれいさっぱり、ここから新しいスタートを切れそうだ(画像:「イーブイ片付けチャンネル」より)
國友 公司 ルポライター

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くにとも こうじ / Kozi Kunitomo

1992年生まれ。筑波大学芸術専門学群在学中よりライターとして活動。訳アリな人々との現地での交流を綴った著書『ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活』(彩図社)が文庫版も合わせて6万部を超えるロングセラーに。そのほかの著書に『ルポ路上生活』(KADOKAWA)、『ルポ歌舞伎町』(彩図社)がある。

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