日本の鉄鋼業は中国リスクに立ち向かえるか 市況総崩れで粗鋼生産量の下方修正が相次ぐ

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安価な中国産鋼材の蔓延が、国際的な鋼材市況を崩壊させている。アジアの熱延鋼板の価格は過去1年で4割近く下落。米国など輸出先でダンピング(不当廉売)認定に至るケースも出てきている。

新日鉄住金やJFEスチールの輸出比率は金額ベースで40~50%に達する。日系メーカーは自動車鋼板など高付加価値品が得意で、中国産鋼材のと競合は少ない。それでも、中国産鋼材の安値輸出のあおりを受けた市況低迷が、日系メーカーの輸出採算を大きく悪化させている。

実際、日本の2015年度上期(4~9月)の粗鋼生産量は5206万トン(前年同期比6.3%減)。柿木会長は「中国製品が世界中に出回り、価格と量に悪い影響を及ぼしている」ことが生産量下振れの主因、との見方を示す。

仮に、2015年度の粗鋼生産量の見通しが1億0600万トン(前期比3.5%減)だとすると、東日本大震災があった2011年度の1億0646万トン以来、4年ぶりの低水準となる。

日系メーカーの業績にどこまで影響が出るのか

定例会見を行う日本鉄鋼連盟の柿木厚司会長

過剰生産問題について、柿木会長は「(中国での工場の稼働は)雇用を前提とし、政府の援助金などがあるため、資本主義経済の国とは違って、減産や設備廃棄のタイミングを計るのは難しい」と説明する。

中国の鉄鋼メーカーの多くは、国有企業や地方政府が出資している。地元の雇用対策という側面から、設備稼働率の維持を優先し、内需で消化しきれない分を安値で輸出に回している。

すでに日系メーカーの業績には影響が出始めている。JFEホールディングスは、7月に海外市況の下落を理由に、2015年度の経常利益予想を期初から300億円引き下げた。

この流れは続くのか。10月29日に新日鉄住金とJFEホールディングスが、30日に神戸製鋼所が今年度上期(4~9月期)決算を発表する。特に新日鉄住金とJFEは輸出比率が高いだけに、市況悪化の影響がどこまで業績に反映されるか。鉄鋼業界のみならず、証券市場にとっても、注目の決算といえそうだ。

中村 稔 東洋経済 編集委員
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