ポイントは、投資効果である。公的資金を投入して、クルマ利用が減り、経済効果が上がったのだ。
具体的には、実証期間中の公共交通利用者数の純増数が、約26万人。特に、平日9時以降や土日のオフピーク時で利用増となった。これにより、延べ約10万台のクルマ利用を削減し、それにともなう便益を約1億円と推計する。

「渋滞なくそう!半額パス」の実績(熊本地域乗合バス事業共同経営に関する状況報告 2025年7月より)
また、クルマの利用者のみならず、普段クルマを使わない人の熊本市内中心部への外出機会が増え、その数は約3万6000人、消費効果は約1億8000万円と推計した。
つまり、合計2億8000万円の経済効果を、実証に対する公的資金7000万円で実現したことになる。
ただし、課題も少なくない
こうした成功体験がある一方で、バス共同経営における事業の現実はとても厳しい。
熊本県全体のバス事業規模は約90億円だが、5社あわせても約30億円の路線収支赤字なのだ。共同経営によって毎年、約1億円の収支改善効果があるが、これではまったく追いつかない。

また、運転士の不足も深刻だ。過去4年間で99人が減少。共同経営による運行効率化で、平日10.6人の削減効果があるが、これも追いついておらず、各社の路線で減便が続いている。
さらに、車両については、平日で8.7台の車両削減効果があるが、コロナ禍での財務状況悪化に伴い、5社の平均車齢が4年間で1.8年高くなっている。今後の更新費用負担が増加することが懸念される状況だ。

共同経営で得られた効果と課題(熊本地域乗合バス事業共同経営に関する状況報告 2025年7月より)
高田氏は「(5社の事業を)束ねることでの効率化」のメリットを実感すると同時に、「束ねることで、できることの限界」も感じているようだ。
そのうえで、『渋滞なくそう!半額パス』実証実験で証明されたように、行政が財政面で公共交通に関与する総括的な仕組み作りを、「できるだけ早く構築するべき」との考えを強調した。
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