赤字続くバス事業を「共同経営」で再建へ!熊本のバス5社が地方交通の課題に挑戦

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徳田課長は、現状を踏まえた熊本地域交通の将来に対して「危機感は強い。超高齢化社会の進展によりクルマの運転ができない人の増加が見込まれるなか、このまま公共交通が衰退していけば、市民生活に大きな影響が出る」と切実な思いを示す。

左から、課長の徳田隆宏氏、主幹兼主査の星田剛明氏、技術参事の虎本崇雄氏。
熊本市 都市建設局 交通政策部 公共交通推進課、左から課長の徳田隆宏氏、主幹兼主査の星田剛明氏、技術参事の虎本崇雄氏(筆者撮影)

だからこそ、中長期的な視点で、バスを含めた公共交通の維持に向けた大規模改善が必須なのだ。

そのため、熊本市では公共交通に関するさまざまな施策を打っており、次の施策について検討するため昨年度から市議会内に地域公共交通に関する特別委員会を設け、議論を進めている。

2023年4月には、バス事業者、タクシー事業者、熊本市、熊本県などが参加する「熊本地域公共交通の再構築検討会」を立ち上げた。

この再構築検討会の内容は原則非公開だが、議論の方向性は、行政による財政面や運行面での公共交通への関わり方にある。

熊本市内はバスや市電が重要な役割を担っている(筆者撮影)
熊本市内はバスや市電が重要な役割を担っている(筆者撮影)

たとえば、熊本のバス事業者への支援は、主に「単年度毎の赤字補助」で国・県・市で対応してきたが、場合によっては運行面、財政面で行政がより積極的に関与する可能性も含めた議論も必要となる、といった具合だ。

まさに「待ったなし」の状況なのである。

そうした中、現在進行中のバス共同経営では、トライ&エラーを試みて各種データを蓄積しており、次世代の熊本に向けた議論の良い叩き台になっているといえる。

熊本都市バスを取材する

熊本市役所を取材した翌日、今度はJR熊本駅に近い熊本都市バス・本山営業所にうかがった。

出迎えていただいたのは、熊本都市バス株式会社の社長で「共同経営推進室」室長の高田晋氏と、共同経営推進室 課長の今釜卓哉氏だ。

熊本都市バス 代表取締役社長・共同経営推進室長の高田晋氏(左)と、共同経営推進室 課長の今釜卓哉氏(筆者撮影)
熊本都市バス 代表取締役社長・共同経営推進室長の高田晋氏と、共同経営推進室 課長の今釜卓哉氏(筆者撮影)

熊本都市バスは、熊本市の市営バスが民営化したもの。設立にあたり、熊本地域のバス事業者各社の幹部が役員として参加する組織であるため、「共同経営に向けた素地がある」(高田社長)という。

そのうえで、2019年度から、熊本県と熊本市とバス事業者で熊本におけるバス交通のあり方検討会を立ち上げ、議論した結果、独禁法特例法の施行もあり、日本初の乗合バスの共同経営に踏み切った。

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