このペースで売れ続ければ、年商600万円も夢ではない。それならもっと広げていいのでは?と、本格的に自動販売機ビジネスに乗り出すことになった。
250円が「安い」。比較対象は冷凍食品ではなかった
しかし、なぜこんなに売れたのだろう。田中さんは最初の頃、「どんな人がどんなニーズで買っているのか」が気になって自動販売機前で張り込みし、購入者にインタビューしてみたという。自動販売機の隣で、ノート片手に立ち尽くす中年男性は、ちょっと目立っていたかもしれない。
16時頃やってきた子供連れの若夫婦は、「晩ごはんは餃子なんですけど、おかずの足しにしようと思って」と答えた。昼時にやってきた40代後半の女性は、「ここで買って職場でランチに食べます」とのこと。健民ダイニングで食事をした帰りに、「お土産に」と買っていく人もいた。

晩ごはん、土産、昼ごはん。目的はいろいろ。「つまりは、立地が絶妙だったということでは」と田中さんは分析する。ケンミン本社は神戸・三宮駅から一駅離れた下町、それも国道沿いにあり、界隈はマンションが多い。また、中小企業も多く、そこに勤めている人もいる。多くのニーズを拾え、立ち寄りやすい場所だったのだと。

もうひとつの要因が、値段だ。さきほどの「ランチに」と買いにきた女性に、なぜ冷凍焼ビーフンを選んだかを尋ねると、彼女は「安いから」と答えたという。
だが、ケンミン側の感覚でいえば、冷凍食品で「一食250円が安い」という感覚はなかった。スーパーで販売されている冷凍食品ならもっと安いものもあるからだ。
でもその女性は、「スーパーで売っている冷凍食品」と比較はしていなかった。「今日のお昼ごはん」を考えたときに、「コンビニはちょっと遠いし、コンビニ弁当を買ったら500~600円するし」と考え、250円のビーフンを「安い」と言ったのだ。
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