「Jリーグクラブ経営にまつわる"常識"は誤解だらけだ」、元リーグ幹部の最新分析で見えてきた《リアルサカつく》の真実
「例えば欧州のサッカーは、勝てば収入が得られる構造づくりに成功しています。アメリカ系ファンドが参入した効果が大きく、ブランド価値を高めるための相当な努力を各クラブが払っており、アニュアルレポートも非常にレベルが高いです。それにより、スポンサー収入や放映権が上がる土壌ができています」(木村氏)
主要収入である放映権は、もちろん自然に上がるものではない。UEFA(欧州サッカー連盟)チャンピオンズリーグに代表される国際大会のブランド力向上の努力も、さらなる放映権増加につながっていて、クラブは大会に出場するだけで莫大な収入が得られる。こうした「頑張れば収入が増える」構造が投資を呼び込んでおり、クラブ側の経営姿勢にも変化が生じた。
「単年度の黒字・赤字にこだわる経営スタンスでは取り残されてしまう。世界各国のクラブは選手の育成と獲得、スタジアムや練習施設に対して積極的な投資をするようになり、赤字を出しながらも増資・投資を続けるクラブが価値を高めていく構図へとシフトしていきました。
こうした流れによって、クラブの企業価値においては『成長』がより重視されており、売上高の伸長が重要度を高めています。AmazonやGoogleといったテックベンチャーの評価法とまったく一緒で、毎年、驚異的な成長を続けるビジネスモデルを作り出しているのです」(木村氏)
NFLと同じく「地域の誇り」となりうるか
木村氏の東大研究チームは昨年、欧州クラブの算出式を導出したJリーグクラブの推定企業価値を論文化し、発表している。それによると、売上高+SNSフォロワー数をベースにした浦和の推定値は242億円にのぼっており、川崎も200億円を突破している。2017年にJ1初制覇を果たした川崎は後発組であるにもかかわらず、飛躍的にクラブの企業価値を高めている。
今後、クラブ経営に関わろうという人たちがそういった成功モデルを念頭に置いて、拡大を目指してアプローチしていけば、価値はどんどん上がっていくはずだ。日本のスポーツ界にはそれだけの余地があると木村氏も考えているという。
アメリカのNFL(ナショナルフットボールリーグ)に目を向けると、地方都市に本拠地を置くクラブが少なくない。長年、野球とバスケットボールの後塵を拝してきたアメリカンフットボールには「あんなところに巨大な競技場を立てて、一体どうするのか」といった批判があったりもしたが、自治体とリーグ、球団の粘り強い経営努力によって、今や圧倒的な人気を博すようになり、大成功を収めた。
Jリーグに関しても、クラブの真の価値基準に対する考え方が浸透し、地元から愛される存在になれば、ネガティブな見方は減るはず。「地域の誇り」と位置づけられるに違いない。
(後編に続く)
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