「Jリーグクラブ経営にまつわる"常識"は誤解だらけだ」、元リーグ幹部の最新分析で見えてきた《リアルサカつく》の真実

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5月23日には自著の出版を記念し、東京大学でフォーラムを開催したところ、定員の120人が瞬く間に埋まり、関心の高さをうかがわせた。

「参加者の8割がビジネスパーソンで、スポーツクラブの経営に興味関心を持つ人が大半を占めていました。本を買ってくださった方も『自分もクラブ経営に携わってみたい』と感じている人が多いと思います。それを実行するに当たっていちばん難しいのは、ゼロからイチにするところ。そのハードルをどう越えていくかが大きなポイントになると思います。

今、プロを目指すいろんなスポーツチームがゼロから立ち上がっていて、研究室に問い合わせも多いので、データを使って一度、体系的にまとめてみたいと思いました」(木村氏)

同日はゴールドマン・サックス時代の後輩に当たるFC今治の矢野将文社長とディスカッションも実施。両クラブの環境の違いにも触れる機会があったようだ。

「岡山と今治ではスポンサーの地元比率がまったく違います。岡山はほぼ地元企業ですが、今治は4割程度が県外企業だと聞きました。FC今治の会長を務める岡田武史さん(元日本代表監督)の発信力を生かして国内・海外に広くアプローチをしているんだと思いますが、われわれの地元ではまだまだすべてを当たり切れていない。

日本の場合、どの地域も年商20億円以下の企業がいちばん多い。そういうところを丁寧に当たっていけば、小さい町でもスポーツクラブ経営は成り立つと考えています。そういう例を挙げながら、できるだけ突っ込んだ話をさせてもらいました」(木村氏)

クラブ強化費を最も多く自前で稼いでいるのは?

同書の中でとくに反響が大きかったのは、親企業・グループ企業を持つJリーグクラブがどれだけ年間拠出金を受け取っているかを独自の方法で算定した点だ。

大きいところで言えば、ヴィッセル神戸。親会社の楽天グループからの拠出金(推定、以下同)は23億7375万〜24億9425万円にのぼるとみられる。柏レイソルが日立製作所から受けている拠出金も22億0856万〜24億0079万円に達するもようだ。

10億円を超えているのは、浦和レッズ(三菱重工業)の11億0118万〜16億0280万円、川崎フロンターレ(富士通)の17億6711万〜22億1411万円、横浜F・マリノス(日産自動車)の10億0738万円といったクラブだ。

逆に、意外と少ないのが、FC東京(MIXI)の7億0477万〜9億0127万円など。拠出金がゼロに近いのが、湘南ベルマーレ(RIZAPグループ)やアビスパ福岡(アパマングループ)で、状況はさまざまなのだ。

木村氏は、単に拠出金額を推定しただけではなく、各クラブが独自で強化費をいくら捻出しているのか(コア強化費)もはじき出した。

ほとんどのクラブでコア強化費と公表済みの強化費の差は大きく、当然ながらコア強化費のほうが少ない。それだけ親企業への依存度が高い経営体質だということがわかる。そういった実情を把握できる、興味深い数字なのである。

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