米国はかねてから中国の埋め立て工事を認めないと明言している。その考えを単純に適用すれば、米艦が12カイリ以内に立ち入ることは何ら問題ないはずだが、実際には、米国は自制していた。争い(の拡大)はできるだけ避けたいからであり、カーター国防長官が許可を求めてもオバマ大統領はなかなか首を縦に振らなかった。しかし、最近ついにゴーサインを出したのだ。
このFinancial Times紙の報道を契機に緊張が走った。特に、中国系の各紙は英紙の記事を引用して大きく報道し、中国としては防衛の準備は怠りないとする解説記事を載せる一方、米国に対しては緊張を高めるようなことをすべきでないと批判した。
ブリンケン米国務次官補が訪中し、8日に国務委員の楊潔篪および解放軍総參謀長の房峰輝と会談したのも、当然南シナ海の問題と関係があると推測されるが、12カイリ内への立ち入りに関してどのような話し合いがあったのか、明らかにされていない。
中国が厳重に報道をコントロール
1990年代の中葉、台湾の総統選挙の際にも、米国務省の担当次官補が訪中して中国軍の指導者(その時は副総参謀長であった)と話し合ったことがあった。そのとき中国側は核の使用までちらつかせたことが後で漏れてきたが、今回はその時と大違いで、報道に対するコントロールは非常に厳格だ。
米艦は、はたして人工島の12カイリ以内に立ち入るか。米国は非常に強い姿勢であり、必要ならば実力の行使も辞さない決意の下に立ち入ろうとしている印象さえあるが、私は、米艦は立ち入るが武力衝突にならないと思う。
カギは、「人工島から12カイリ内に立ち入る」ことの国際法的解釈にあり、米国は中国と、武力でなく、国際法で勝負しようとしていると思う。
米国は公海上の自由通航を非常に重視しており、今回の立ち入りもその例だ。一方、中国は埋め立てて作った島は中国の領土で、そこから12カイリは中国の領海だという考えだ。
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