〈見逃された不正〉監査法人・VC・証券会社・東証…オルツに続々とだまされた深層 "単純な構図"になぜ気づかなかったのか

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他方で、オルツはVCなどの株主や大和証券、東証に虚偽の説明を行っていた。

2022年4月に実施された資金調達に向けた説明資料では、有料アカウント数について、顧客数は全て有料アカウントであり、法人約3000(件)はプレスリリースの数字であること、足元の顧客数=法人契約であることなどが記載されていた。が、2025年7月時点でも有料アカウント数は5170件にとどまり、アカウントの大半は無料会員であることから、実態と大きくかけ離れていた説明をしていたことがわかる。大和証券や東証も、広告費や研究開発費の使途や、監査法人の交代などについて、事実とは異なる説明を受けていた。

東証の山道裕己CEOは7月30日の定例会見で、「上層部がみんな一緒になって、意図的に悪意を持ってだまそうとした場合には監査法人ですら見抜けないわけだから、それをもって審査の妥当性がないとはまったく思わない。ここまで徹底してやられるとなかなか事前には察知できない」と弁明している。

不正をすんなりと受け入れたCFO

こうした中、興味深い指摘をするのは、米倉氏の後に社長に就いた最高財務責任者(CFO)の日置友輔氏と接点もあったという市場関係者だ。

この関係者が報告書のポイントの1つとして挙げるのが、2021年10月に日置氏がオルツに入社した途端、それまで社内では米倉氏を含め3人しか知らなかったスキームの全容を知らされ、日置氏もこのスキームをすんなり受け入れたことだ。「普通は大手証券出身者がこのスキームで上場を目指すと聞かされて、『はいわかりました、やりましょう』とはならない」。

創業した米倉氏はともかく、CFOの日置氏もあっさりとスキームの中心人物になったことが、不正をより暴きにくくした可能性はある。

今回の不正は、2009年に粉飾決算が発覚し、IPOからわずか半年で上場廃止となった半導体メーカー、エフオーアイのケースと極めて近いと指摘される。東証の山道CEOは「こういう人たちはつねに出てくるので根絶できない」というが、監査法人やVC、証券会社、東証には個人投資家を巻き込んだ責任がある。それぞれ妄信しすぎたポイントがなかったか、改めて検証することが求められる。

オルツが関係者に行っていた虚偽の説明の詳細や、大手監査法人がベンチャーの監査を避ける傾向にある実態、日置CFOを知る人物が挙げたもう1つのポイントなどについて触れた本記事の詳報版は、東洋経済オンライン有料版記事「監査法人・大手VC・証券会社・東証…オルツの『単純な循環取引』を見破れなかった真因 創業者の主導の下、財務責任者もあっさり不正の"中心人物"に」でご覧いただけます。
倉沢 美左 東洋経済 記者

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くらさわ みさ / Misa Kurasawa

米ニューヨーク大学ジャーナリズム学部/経済学部卒。東洋経済新報社ニューヨーク支局を経て、日本経済新聞社米州総局(ニューヨーク)の記者としてハイテク企業を中心に取材。米国に11年滞在後、2006年に東洋経済新報社入社。放送、電力業界などを担当する傍ら、米国のハイテク企業や経営者の取材も趣味的に続けている。2015年4月から東洋経済オンライン編集部に所属、2018年10月から副編集長。 中南米(とりわけブラジル)が好きで、「南米特集」を夢見ているが自分が現役中は難しい気がしている。歌も好き。

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