〈見逃された不正〉監査法人・VC・証券会社・東証…オルツに続々とだまされた深層 "単純な構図"になぜ気づかなかったのか
本スキームによる取引は、創業者で元CEOの米倉千貴氏(2025年7月29日に辞任)の指導の下、2021年6月頃から行われるようになっていた。
例えば2022年12月期の全社売上高の91.3%、翌期は91.0%がこのスキームによるものだった。2021年12月期から2024年12月期の累計では、売上高で約119億円が過大計上されていた。

当然、AI GIJIROKUの有料アカウント数も、公表数値と実態は大きくかけ離れていた。オルツの有価証券報告書によると、直近の2024年12月期末時点での有料アカウント数は2万8699件になっている。が、第三者委の報告書によると、2025年7月時点での有料アカウント数は5170件、そのうち直近でアクセス実績があったのは2236件にすぎなかった。
スルーされた「申し送り事項」
オルツの監査役や、同社に出資していたジャフコやSBIグループなど44社ものベンチャーキャピタル(VC)、主幹事だった大和証券、そして東証はなぜ、この単純な構図に気が付かなかったのか。報告書では関係者たちが次々と”だまされていく”さまが書かれている。
まずは監査法人。報告書によると、もともと監査を行っていた法人は2021年12月期の期末監査が終了せず、2022年10月に合意解約に至っている。2022年12月期以降は、横浜に拠点を置くシドーが監査を担っていた。
引き継ぎの際、シドーは「循環取引の疑念」を伝えられていた。しかしオルツとの会議において、放送日や番組が記載されたCM放送予定の資料や、CM費用の発注書が提出されたことなどから、不正による虚偽表示を示唆する状況があるとは認識せず、決算数値にも疑念を抱くことはなかったという。
こうした監査法人の姿勢を問題視するのは、企業のガバナンスや不正会計に詳しい青山大学名誉教授の八田進二氏だ。例えば第三者委の報告書では、AI GIJIROKUは無形なため、アカウントの存在を確認することが難しいとの記載があるが、時間をかければ不可能ではなかったと指摘する。
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