ともあれトランプ大統領は、すでに関税交渉において「伏線回収モード」になっている。まだカナダやメキシコなど、揉めそうな相手は残っているものの、次なる標的は中国だろう。貿易赤字の金額からいっても、相手の手強さからいっても、これが「ラスボス」であることは衆目の一致するところである。
「米中ビッグディール」に前のめり?のトランプ政権
米中交渉は7月29日、ストックホルムで行われていた閣僚協議が終了した。8月12日に終了する予定だった追加関税と輸出規制の一時停止措置は、さらに90日間の延期となりそうだ。米中両大国の協議が進むのは結構なことだが、トランプ政権がいささか前のめりになっているのではないかという懸念がある。
特に気になるのは、台湾の頼清徳総統が8月に中南米諸国を訪問した帰途に、ニューヨークに立ち寄ることをトランプ政権が拒否したことだ。中国との貿易協議への悪影響を恐れたのだろうが、このことで頼政権が受ける打撃は深い。南米のパラグアイなど、まだ台湾と外交関係を有する国を訪問した帰途に、「給油のために」アメリカに立ち寄るというのは、過去に蔡英文総統などが使ってきた常套手段。それを拒絶されたのでは、頼政権の「対米接近」路線が泣くというものだ。
筆者がトランプ大統領の対中姿勢を懸念するのは、この夏は国内外で以下のような政治日程があるからである。
8~9月の国内外重要政治日程
(8月)
- 臨時国会を召集(1日)
- 「相互関税」上乗せ税率が復活(1日)
- 自民党が両院議員総会を実施(8日)
- 戦後80年(15日)
- アフリカ開発会議(横浜、20~22日)
- ジャクソンホール会議(アメリカ・カンザス州、21~23日)
- 上海協力機構会議(中国・天津、8月31日~9月1日)
(9月)
- 中国が対日戦勝80周年で軍事パレード(3日)
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