「歌を聴いていると気に障る」「暗いヤロウだ」とアンチが湧いた過去…それでも《さだまさし》が「1兆人に1人の存在」と絶賛されるワケ

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ただ、映画公開から12年後の1993年、三峡ダムが着工。2009年に完成し、これにより、長江流域は治水がなされ、経済が発展。都市化が進み、景観は大きく変わっていった。結果的には、彼らが撮影した三峡ダム着工以前の長江沿いの風景は、歴史的資料となったのだ。

とはいえ結果オーライというには、あまりにも額が大きく、返すのに30年かかり、さだは完済後に引退する予定だった。

しかし、東日本大震災がきっかけで「(自分の存在が)消えゆくまで歌い続ける」と決意する。

そして、「被災地で人を救うために活動する国内の個人や団体の偉大な志を支援したい」と、「風に立つライオン基金」を立ち上げるに至るのだ。

歌って、動いて、何が必要かを探す。人の役に立つことを諦めないパワーは無制限だ。

前述の新しいアルバム『生命の樹~Tree of Life~』に収録されている「神嶺~エベレスト~」に、こんな歌詞がある。

「でも決してあきらめたわけじゃないんだ いつか届くような歌を書いてやる」

さだまさしは、歌の力を探し歌い続ける。どこまでも高く空を飛ぶ鳥を羨みながらの決意表明だ。

さだまさし
風に立つライオン基金の活動で、2024年に能登半島地震に見舞われた輪島にも足を運んだ(写真:さだまさし公式Instagramより)

さだまさしの歌は「四季と旅」

こうして見ていくと、さだまさしは、想像の100倍タフだった。そのタフな彼が、52年間貫くのは、全国を旅し、拾い集めた感動と疑問を歌うことだ。

その感動と疑問に、日本の自然や四季折々の景色と、家族の励ましや心配、願いが繊細に折り重なる。

すべて、移ろいゆき、朽ちていく。もしくは、すぐ消えてしまうものばかり。それをさだが歌い残そうとする。52年衰えない、不思議な力強さで。

さだまさしの歌が今も響くのは、なくなっていくものの大切さを思い出させてくれるから、なのかもしれない。

田中 稲 ライター

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たなか いね / Ine Tanaka

大阪の編集プロダクション・オフィステイクオーに所属し、『刑事ドラマ・ミステリーがよくわかる警察入門』(実業之日本社)など多数に執筆参加。個人ではアイドル、昭和歌謡・ドラマ、世代研究、紅白歌合戦を中心に執筆。著書に『そろそろ日本の全世代についてまとめておこうか。』(青月社)、『昭和歌謡 出る単 1008語』(誠文堂新光社)がある。

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