この再国有化の動きを象徴するのが、モスクワの主要空港の一つであるドモジェドボ空港会社の再国有化だ。2025年6月、外国人が違法に空港経営陣に加わったとして、突然、国有化された。こうした有無を言わせぬ再国有化が、プーチン政権の強圧的な措置であることを象徴するのは、再国有化問題を担当するのが経済省庁ではなく、検察当局だという点だ。国有化を取り消す「法的理由」などロシアの検察当局は、いくらでもいとも簡単に作り上げられる。
こうした動きに対し、最近、一部オリガルヒが秘かに国外に出国を図り、空港で逮捕される事態も起き始めている。政権に従順でありさえすれば、ビジネスを保障してきたプーチン政権とオリガルヒたちとの「社会契約」がもはやなくなったことを物語るロシアの新常態(ニューノーマル)なのだ。
上記したようなプーチン・ロシアでさまざまなニューノーマルの出現を受け、ロシアの反政権派の間で声高に指摘され始めているのは、かつての独裁者スターリンが行った弾圧政治の再来を懸念する声だ。スターリンの恐怖政治は主に1930年代、政敵や罪もない一般国民数百万人を粛清した。プーチンの場合、弾圧の規模ではさすがにスターリン粛清には及ばないだろうと「ミニ・スターリン化」と呼ばれている。
スターリン再評価の動きが加速
スターリン時代に政治犯を拷問したことで知られるモスクワ中心部にある旧レフォルトボ刑務所(現在は司法省管理の拘置所)の管理が、プーチンの出身母体である治安機関、ロシア連邦保安局(FSB)に戻るとの見方も出ている。
スターリン再評価の動きも最近加速している。モスクワ中心部の地下鉄駅構内にスターリンをモデルにしたレリーフが登場したのだ。
しかし、この動きの先に反政権派が最も懸念するのは、ロシア政治にとって衝撃的な事だ。1956年にスターリン時代における大規模粛清の事実を明るみに出し、告発した当時のフルシチョフ共産党第一書記による「スターリン批判報告」の正当性を、プーチン政権が公式に否定するのではないかとの見方だ。
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