プーチンは対独戦争を勝利に導いたスターリンを評価している。当面、この「ミニ・スターリン化」と「スターリン批判報告」の取り消し問題の行方が、プーチン政治の今後を見定める意味で重要なポイントになるだろう。
以上、詳述してきたのは、過去半年間でのプーチン政権による強権化加速の動きだが、この期間は2025年1月にアメリカ大統領に就任したトランプによるウクライナ戦争停戦仲介の期間とも重なる。
そのトランプによる、これまでの停戦仲介外交について、プーチン政権は2025年7月初め、事実上の中間総括を発表した。これは、侵攻開始以来、学者というより、クレムリンの意向を代弁するメッセンジャーの役割を果たしている外交専門家のドミトリー・トレーニン氏によるロシア有力紙コメルサント紙への寄稿だ。
プーチン政権としては、ホワイトハウスをいたずらに刺激するのを避ける目的で、クレムリンとしての公式な声明ではなく、トレーニン論文という形で評価を示したものだ。
停戦仲介への失望:戦争長期化宣言へ
「特別外交作戦に関する中間的結果」と題した論文は、トランプ仲介について、極めて冷めた評価を下したのが特徴だ。論文はまず、トランプ政権との交渉結果について「結論として、今年初めに言われた(米ロ関係を劇的に変える)トランプ革命は起きなかった。トランプは結局、アメリカの伝統的支配層に接近した」と失望感を露わにした。
これは、当初、仲介でロシアの言い分をほぼ丸のみするかに見えたアメリカ政権が、結局2025年6月末の北大西洋条約機構(NATO)首脳会議で、欧州側が購入する形でウクライナへのアメリカ製武器供与再開に同意するなど、米欧の協力関係を曲がりなりにも維持したことへの落胆ぶりを示し、もはやトランプ政権がウクライナ問題でロシアに大幅に歩み寄る可能性がなくなったとの判断を示した。
そのうえでトレーニン氏は米欧に対し、極めて挑戦的な発言を行った。曰く「戦争は2025年には終わらない。それどころか、ウクライナでの軍事作戦が終わった後も終わらない」と。
同氏はこう警告した。「戦争は長くなる。アメリカはトランプがいようといまいと、われわれの敵であり続ける」と。つまり、プーチン政権にとって、反西側強権国家の建設と対米敵視外交がコインの裏表の関係にあり、今後も侵攻を長期間続けるとの方針を明言したものだ。
このプーチン・ロシアの強硬な戦争継続宣言を受けて、米欧、そしてウクライナは戦争早期終結の可能性を相当低めに見る必要が出てきたと言える。
一方で、この「戦争長期化」発言を受け、ロシアの対アジア政策にも影響が出るだろう。日本政府もこの現実を正面から受け止め、対ロ関係について強い緊張感を持って臨むべきだ。
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