JASRAC離脱のエイベックス、その2つの狙い 「独占」が崩れた音楽業界では、何が起こる?
昔は、音楽分野での「著作権管理事業者」はJASRACしかありませんでしたが、2001年、「著作権等管理事業法」が施行され、新規参入ができるようになりました。こうして、「イーライセンス」や、「ジャパン・ライツ・クリアランス(JRC)」という著作権管理事業者が登場しました。
このように、法律上は、新規参入できる仕組みが作られたのですが、ただ、実際上は、JASRACの独占状態を崩すことはとても難しい状態でした。特に問題となったのが、JASRACと放送局との「包括契約」です。
テレビ局などの放送局は、放送で膨大な数の楽曲を使用していますが、使用する楽曲ごとに、個別に課金しているわけではありません。著作権使用料として放送事業収入の1.5%をJASRACに支払うことで、JASRACの管理楽曲を「使い放題」という包括契約になっているのです。
エイベックスの2つの狙い
JASRACの管理楽曲は300万曲を超え、圧倒的なシェアを誇ります。ですので、放送局は、JASRACの管理楽曲が使い放題である以上、さらにおカネを払ってまでほかの著作権管理事業者の管理楽曲を使用しようとしないわけです。結果的に、作曲家や音楽出版社は、きちんと放送の使用料を徴収してくれるJASRACを選ぶことになります。
「このような状態は独占禁止法違反ではないか」ということが争いになり、今年4月、最高裁の判断により、「JASRACの包括契約は他業者の新規参入を妨げている」とする高裁判決が確定しました。
この最高裁の判断により、JASRACとしても従来の徴収方法を見直さざるをえなくなり、今年の9月、従来JASRACが放送局から受け取っていた著作権使用料を、利用された楽曲の割合に応じてイーライセンスやJRCとシェアすることが合意されました。
今回のエイベックスの狙いは、2つあると思います。ひとつは、音楽CDの売上が減少しているため、著作権管理事業に力を入れて、より収益性を高めることです。近年、音楽CDの売上は全盛期の半分程度まで落ち込んでいますが、JASRACの著作権使用料の徴収額は堅調で、むしろ90年代よりも上昇しています。
その中でも、放送局から徴収する使用料は年間300億円を超えており、レコード会社やカラオケ事業者から徴収する使用料よりも、ずっと大きな金額です。そして、この放送局からの著作権使用料について、JASRAC・イーライセンス・JRCがシェアすることが合意されたわけです。