渋沢栄一の「論語と算盤」と岸田元首相の「新しい資本主義」に通底する、「か」ではなく「と」という発想

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社会から見放されたら企業は存続できません。逆に言えば、社会と強く結ばれることにより企業のレジリエンスは向上し、ハードルレートが下がり、将来的なリスク・プレミアムを縮小することができます。つまり、企業価値を引き上げることができるのです。

また、社会と共にあろうとする企業の姿勢やパーパスは有為な人財を引き寄せ、新たなイノベーションを創出する原動力となります。ソーシャル・セクターに対して企業社会から資金や技術が供給されることにより、少子高齢化を迎える中、「自助」「公助」だけでは不十分なセーフティー・ネットが「共助」の力で強化されます。

結果として社会に包摂性としなやかなレジリエンスが生まれ、誰もが等しく、失敗を恐れずに、未来を切り拓くアニマル・スピリッツを燃やすことができるようになる。そのエネルギーがまた、企業に活力をもたらしていくのです。

この共助資本主義を世界に先駆けてわが国で生み出すことこそが、私たちのフロンティアです」

複雑な問題を解決する「コレクティブインパクト」

つまり、共助資本主義は、民主導による成長と共助が両立したウェルビーイングの実現を目的としたもので、成長だけでなく、企業とソーシャル・セクターが連携した社会課題を解決する共助により、包摂ある社会をつくることを目指すということです。

特に興味深いのが、目指す価値創造として、自治体・行政、ソーシャル・セクター、大学という強みの異なるセクターと協働する「コレクティブインパクト」により、大規模な社会変革を起こすことが掲げられているところです。

コレクティブインパクトとは、複雑な問題の解決に向けて、互いの違いを活かしながら"集合的"なインパクトを生み出すという考え方です。

さらに新浪氏は次のようにも述べています。

「共助経営は、CSR(企業の社会的責任)、CSV(共通価値の創造:経済価値と社会価値の創造を同時に追求)やESG、SDGs(持続的な開発目標)などに代表されるコンセプトや評価軸とは異なる。

単に"経済的価値"と"社会的価値"の創造活動を両立するにとどまらず、コレクティブインパクトを生み、社会変革を起こし、これを企業価値向上に繋げることを目指す。この意味で、共助経営はひとつの競争戦略に今後なっていくであろう」

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