渋沢栄一の「論語と算盤」と岸田元首相の「新しい資本主義」に通底する、「か」ではなく「と」という発想

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渋沢栄一が説く「道徳経済合一」とは、経済活動において、公益の追求を尊重する「道徳」と、生産殖利である「経済」、すなわち仁義道徳と生産殖利とは元来ともに進むべきもの、ともに重視すべきものであり、どちらかが欠けてはいけないという考え方です。

道徳と経済のどちらかが優先されるものではなく、この2つはそもそも同じ位置にあり、一緒に進むべきものとしています。

渋澤健さんは、「『論語と算盤』の最も簡略化したメッセージは『"と"の力をもとう』ということだと思います。論語か算盤かという二者択一の"か"ではなく、論語と算盤、どちらも選ぶこと」と言います。

そして、渋沢栄一の教えというのは、単に倫理的資本主義の教えの次元を超えており、今の言葉で表現すれば、持続性(サステナビリティ)やSDGsにつながる話であるということです。

また、「道徳と経済という一見つながらないものをつなげると、そこに創造が生まれる」とも語っています。

「新しい資本主義」という考え方

2021年に岸田首相が就任して打ち出した目玉の政策として「新しい資本主義」があります。

資本主義はこれまで3回の大きな転機があったといいます。最初は自由放任主義で、個人の経済活動の自由を最大限に保障し、国家による経済活動への干渉・介入を極力排除しようとするものでした。

これが2つの世界大戦を経験する中で、政府による社会保障を重視する福祉国家の考え方に取って代わられました。その後、冷戦構造の中で、競争力を失いつつあった経済を立て直すため、新自由主義の考え方が台頭しました。

今回は、資本主義の歴史上、3回目の大きな転換の契機であり、資本主義の第4ステージである新しい資本主義に向けて改革を進めなければいけないとしています。

これまでの転換が、「市場か国か」、「官か民か」の間で振り子の如く大きく揺れ動いてきたのに対し、新しい資本主義においては、市場だけでは解決できない、いわゆる外部性の大きい社会的課題について、「市場も国家も」、すなわち新たな官民連携によって、その解決を目指していくことが打ち出されています。

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