渋沢栄一の「論語と算盤」と岸田元首相の「新しい資本主義」に通底する、「か」ではなく「と」という発想
そして、新しい資本主義を貫く基本的な思想として、①「市場も国家も」「官も民も」によって課題を解決すること、②課題解決を通じて新たな市場を創る、すなわち社会課題解決と経済成長の二兎を実現すること、③国民の暮らしを改善し、課題解決を通じて1人ひとりの国民の持続的な幸福を実現することの3つを挙げています。
また、「民間も公的役割を担う社会を実現」が掲げられています。
そして、「多くの社会的課題を国だけが主体となって解決していくことは、困難である。社会全体で課題解決を進めるためには、課題解決への貢献が報われるよう、市場のルールや法制度を見直すことにより、貢献の大きな企業に資金や人が集まる流れを誘引し、民間が主体的に課題解決に取り組める社会を目指す必要がある。
また、社会的課題の解決の担い手も、既存企業のみならず、スタートアップ、社会的起業家、大学やNPO等、多様化していくことが不可欠であり、民間が公的役割を担える社会を実現していく」としています。
経済同友会の「共助資本主義」
2023年に経済同友会の代表幹事にサントリーホールディングス代表取締役会長の新浪剛史氏が就任されましたが、新浪氏が掲げているのが、「新たな経済社会創造に向けて─令和モデル『共助資本主義』の実現」です。
私自身も同友会のメンバーとして活動していることもあり、大変共感しているメッセージです。どのようなメッセージか、2024年総会での新浪氏の所見から一部を引用します。
「(前略)……経済成長をもたらす資本主義のダイナミズムは、その厳しい競争と新陳代謝を前提にしています。経済全体が成長しても、社会の豊かさや人々のウェルビーイングにつながらなければ意味がありません。
現に世界を見渡せば、行き過ぎた貪欲な資本主義が深刻な分断を招き、社会を危機に陥らせています。私たちは成長を取り戻さなければなりませんが、同時に、私たちが停滞している30年ほどの間に成長を謳歌した国々が陥った過ちを繰り返すべきではありません。
(中略)……共助資本主義が企業社会に求めるのは、成長の結果生じる利益を社会に還元するという一面的な社会貢献ではありません。社会課題の解決に取り組むNPOなどのソーシャル・セクターとの連携を進めることで、企業は、社会から必要とされる、社会に欠かせない一員になります。
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